脳卒中後の食事介助、家族に何を教える?片麻痺の5原則
看護師国家試験 第106回 午後 第38問 / 成人看護学 / 脳・神経系
国試問題にチャレンジ
脳出血( cerebral hemorrhage )の後遺症で左片麻痺と嚥下障害のある患者の家族に、食事介助の指導を行うときの説明で適切なのはどれか。
- 1.「食材にこんにゃくを入れると良いですよ」
- 2.「体を起こしたら、左の脇の下をクッションで支えましょう」
- 3.「口の左側に食べ物を入れるようにしましょう」
- 4.「飲み込むときに咳が出なければ誤嚥の心配はありません」
対話形式の解説
博士
今回は脳出血後遺症の食事介助指導じゃ。家族が在宅で担う重要な場面じゃよ。
アユム
左片麻痺と嚥下障害がある患者さんですね。
博士
うむ。まず基本姿勢から考えるのじゃ。座位をとるとき、どうなる?
アユム
左側に傾きやすいですよね。
博士
その通り。体幹が傾くと頭頸部も傾き、誤嚥リスクが跳ね上がる。だから左脇の下にクッションを入れて正中位を保つのじゃ。
アユム
なるほど、姿勢がまず基本ですね。
博士
姿勢のもう一つのポイントは頸部軽度前屈じゃ。顎を引くと咽頭と気管の角度が深くなり、誤嚥しにくくなる。
アユム
食べ物を口に入れる位置はどうしたらいいですか?
博士
健側じゃ。この患者なら右側。麻痺側に入れると舌や頬の動きが悪く食塊が作れず、残渣も溜まりやすい。
アユム
『左側に入れましょう』は引っかけだったんですね…。
博士
その通り。左片麻痺=左に食物を入れるのは禁忌と覚えるのじゃ。
アユム
食材でこんにゃくはどうですか?
博士
こんにゃくは弾力が強くかみ切りにくいから嚥下障害では不向きじゃ。のり・わかめ・もち・パン・さらさらの液体なども誤嚥しやすい。
アユム
逆におすすめの食材は?
博士
ゼリー・プリン・ヨーグルト・卵豆腐・とろみ付けした煮物・全粥などじゃ。嚥下調整食分類2021という学会の分類表も押さえておくとよい。
アユム
とろみって、どれくらいつけるんですか?
博士
薄いとろみ(スプーンからさらさら流れる)、中間のとろみ(とろっと流れる)、濃いとろみ(流れにくい)の3段階があり、患者の嚥下機能に合わせて使い分けるのじゃ。
アユム
『咳が出なければ誤嚥の心配はない』という選択肢、これもダメですよね?
博士
うむ、不顕性誤嚥(silent aspiration)というのがあって、咳反射が低下していると誤嚥しても咳が出ないのじゃ。
アユム
えっ、気づかないんですか?
博士
そうじゃ。高齢者や脳血管障害後では不顕性誤嚥が多く、誤嚥性肺炎の主要原因となる。発熱・痰の増加・SpO2低下なども合わせて観察するのじゃ。
アユム
食後の注意点はありますか?
博士
食後30分は座位を保ち、逆流性誤嚥を防ぐ。そして食後の口腔ケアは誤嚥性肺炎予防の最重要ポイントじゃ。口腔内細菌が唾液誤嚥と一緒に肺に行くのを防ぐからな。
アユム
左側空間無視がある場合はどうしますか?
博士
良い質問じゃ!左半球損傷で左側無視が起きると、左側の食事を認識できず残す。配膳は健側寄りに、食事中に『左側もありますよ』と声かけする工夫が必要じゃよ。
POINT
脳卒中後の片麻痺患者の食事介助は『姿勢・食形態・口腔内への入れ方・ペーシング・口腔ケア』の5原則で組み立てます。本問の正解は『左(麻痺側)の脇の下をクッションで支える』で、姿勢安定が嚥下安全の第一歩です。健側からの食物提供、嚥下しやすい食形態、不顕性誤嚥への警戒、食後30分の座位保持、口腔ケアの徹底という一連の流れを家族が在宅で実践できるよう指導することが、看護師の重要な役割です。食事は栄養摂取であると同時に楽しみでもあり、安全と喜びを両立させる支援が求められます。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:脳出血( cerebral hemorrhage )の後遺症で左片麻痺と嚥下障害のある患者の家族に、食事介助の指導を行うときの説明で適切なのはどれか。
解説:正解は2です。脳出血後の左片麻痺では、座位で体幹が麻痺側(左)に傾きやすく、姿勢の崩れは嚥下時の誤嚥リスクを増大させます。体を起こしたら、左(麻痺側)の脇の下にクッションやタオルを当てて体幹を安定させることで、頭頸部の正中位が保たれ、安全な嚥下姿勢を作ることができます。さらに頸部を軽く前屈させ『顎引き嚥下』を促すと、咽頭と気管の角度が深くなり誤嚥防止に有効です。
選択肢考察
-
× 1. 「食材にこんにゃくを入れると良いですよ」
こんにゃくは弾力が強くかみ切りにくく、咀嚼・食塊形成・嚥下のいずれも困難で、高齢者の窒息原因にもなりやすい食材。嚥下障害のある患者には不適切。ゼリー、プリン、ヨーグルト、とろみをつけた煮物などが推奨される。
-
○ 2. 「体を起こしたら、左の脇の下をクッションで支えましょう」
左片麻痺では麻痺側に体幹が傾くため、クッションで支えて正中位を保つ。姿勢の安定は嚥下の安全性に直結する。
-
× 3. 「口の左側に食べ物を入れるようにしましょう」
左麻痺側に食べ物を入れると、舌や頬の感覚・運動が低下しているため食塊形成が困難になり、食物残渣も左側に溜まりやすい。健側である右側に入れ、右の奥歯で咀嚼してもらうのが正しい。
-
× 4. 「飲み込むときに咳が出なければ誤嚥の心配はありません」
咳反射が低下している場合、食物や唾液が気管に入っても咳が出ない『不顕性誤嚥(silent aspiration)』が起こりうる。特に高齢者や脳血管障害後の患者では多く、誤嚥性肺炎の主要原因。咳の有無だけで安心せず、嚥下時の頸部聴診・声の変化・発熱の有無など多角的観察が必要。
嚥下障害患者の食事介助の基本は『姿勢・食形態・一口量・ペーシング・口腔ケア』の5点セット。姿勢は30〜60度のギャッジアップで頸部軽度前屈、健側を上にする側臥位も有効。食形態は嚥下調整食分類2021(学会分類)が広く使われる。一口量はティースプーン1杯程度、次の嚥下を待ってから次の一口、食後30分は座位または半座位を維持して逆流性誤嚥を防ぐ。食後の口腔ケアは誤嚥性肺炎予防の要。左片麻痺では左側空間無視の合併にも注意し、トレイは健側寄りに配置する配慮も必要。
脳卒中後の片麻痺+嚥下障害患者の食事介助で、姿勢・食形態・口腔内への食物の入れ方・誤嚥判断の原則を問う問題。
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