脊髄損傷患者の職場復帰支援を考えよう
看護師国家試験 第108回 午後 第88問 / 成人看護学 / 脳・神経系
国試問題にチャレンジ
交通事故によって脊髄損傷(spinal cord injury)で入院した下肢に麻痺のある成人患者。 職場復帰に向けて、看護師が患者に説明する内容で適切なのはどれか。2つ選べ。
- 1.自己導尿は自宅で行う。
- 2.仕事中は飲水を制限する。
- 3.車椅子には体圧分散マットを使用する。
- 4.残業する場合の休憩時間は不要である。
- 5.職場の担当者に自分の病気について伝える。
対話形式の解説
博士
今日は脊髄損傷で下肢麻痺のある成人の職場復帰指導じゃ。
アユム
下肢麻痺だと移動手段は車椅子になりますね。
博士
そうじゃ。長時間座位のため坐骨部に圧が集中して褥瘡ができやすい。麻痺域は知覚もないから気づきにくいのじゃ。
アユム
だから選択肢3の体圧分散マットが必要なんですね。
博士
そのとおり。ロホクッションやジェルクッションを使い、さらに15分ごとに15秒以上のプッシュアップで除圧するのが基本じゃ。
アユム
5の職場の担当者に病気を伝えるのは?
博士
正しい。バリアフリー動線の確保、緊急時対応、勤務時間の調整、トイレ環境など、職場の理解なしでは継続就労は難しいのじゃ。
アユム
1の自己導尿は自宅でのみ行うというのはどうでしょう?
博士
誤りじゃ。自己導尿は4〜6時間ごとに必要じゃから職場のトイレでも清潔操作で実施する。職場側に実施スペースを相談するのじゃ。
アユム
2の飲水制限は?
博士
これも誤り。脊髄損傷患者は尿路感染や尿路結石を起こしやすいので、1.5〜2L/日の水分摂取が推奨される。むしろ積極的な摂取を指導するのじゃ。
アユム
4の休憩不要というのは明らかに誤りですね。
博士
そうじゃ。疲労は自律神経過反射や褥瘡発生、事故の引き金になる。定期的な休憩とプッシュアップは必須じゃ。
アユム
自律神経過反射とは?
博士
T6以上の高位損傷でよく起こる。膀胱充満や便秘、褥瘡などの刺激で急激な高血圧・頭痛・発汗を生じる。緊急対応が必要じゃぞ。
アユム
排便コントロールも大切ですね。
博士
そのとおり。規則正しい排便習慣、食物繊維、必要時に摘便や坐薬で管理する。排便リズムが乱れると自律神経過反射の誘因にもなる。
アユム
産業医やジョブコーチとの連携も重要そうですね。
博士
そうじゃ。多職種連携で段階的復帰計画を立てると成功率が高まる。
POINT
脊髄損傷患者の職場復帰では、褥瘡予防のための体圧分散マットとプッシュアップ、職場担当者への情報共有が重要です。自己導尿は職場でも継続し、水分摂取は制限せず尿路感染予防に努めます。疲労は自律神経過反射や褥瘡の引き金となるため、十分な休憩と多職種連携による段階的復帰が鍵となります。
解答・解説
正解は 3 ・ 5 です
問題文:交通事故によって脊髄損傷(spinal cord injury)で入院した下肢に麻痺のある成人患者。 職場復帰に向けて、看護師が患者に説明する内容で適切なのはどれか。2つ選べ。
解説:正解は 3 と 5 です。下肢麻痺のある脊髄損傷患者の職場復帰支援では、長時間の車椅子乗車による坐骨部の圧迫で褥瘡が発生しやすいため体圧分散マット(クッション)が必須です。また、業務調整や緊急時対応のために職場の担当者に障害の状況を伝え、理解と協力を得ることが継続就労の鍵となります。
選択肢考察
-
× 1. 自己導尿は自宅で行う。
自己導尿は4〜6時間ごとに行う必要があり、職場のトイレでも清潔操作で実施するよう指導します。
-
× 2. 仕事中は飲水を制限する。
脊髄損傷では尿路感染や尿路結石の予防のため1.5〜2L/日の水分摂取が推奨され、制限は不適切です。
-
○ 3. 車椅子には体圧分散マットを使用する。
知覚麻痺により坐骨部の圧迫に気づきにくく褥瘡リスクが高いため、ロホクッションなどの体圧分散マットが必要です。
-
× 4. 残業する場合の休憩時間は不要である。
疲労が蓄積すると自律神経過反射や褥瘡、事故のリスクが高まるため、定期的な休憩・プッシュアップが不可欠です。
-
○ 5. 職場の担当者に自分の病気について伝える。
バリアフリー配置、緊急時対応、勤務調整を得るため、上司・産業医・担当者に障害内容を伝える必要があります。
脊髄損傷患者の職場復帰支援では、1日数回のプッシュアップ(15秒以上の除圧)による褥瘡予防、自己導尿に必要な清潔な場所・時間の確保、排便コントロール、水分摂取の継続、自律神経過反射(T6以上の損傷で尿意や便意刺激で高血圧)への対応が重要です。産業医・ジョブコーチとの連携も有効です。
脊髄損傷患者の社会復帰支援における褥瘡予防、自己管理、職場環境調整の重要性を問う問題です。
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