退院前カンファレンス 多職種チーム医療の基本
看護師国家試験 第108回 午後 第96問 / 成人看護学 / 脳・神経系
国試問題にチャレンジ
次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(58歳、男性、会社員)は、妻(55歳)と2人暮らし。5年前から高血圧症(hypertention)、脂質異常症(dyslipidemia)を指摘され、降圧薬を内服していた。自宅で左半身に脱力感が出現し、救急車で搬送された。救急外来でCT及びMRI検査を行った結果、右中大脳動脈領域に脳梗塞(cerebral infarction)の所見が認められた。入院時は、グラスゴー・コーマ・スケール<GCS>E3V4M5、体温36.8°C、呼吸数16/分、脈拍66/分(不整)、血圧160/85mmHg、HbA1c5.8%、心電図では、RR間隔は不定で心拍数100/分であった。入院後、血栓溶解療法を受け、2日後からリハビリテーションが開始された。1週後には回復期リハビリテーション病棟へ転棟した。 転棟から6週が経過し、退院に向けて多職種チームでカンファレンスを開催することになった。Aさんは、外来でのリハビリテーションを継続しながら元の職場への復帰を希望している。 Aさんの退院前のカンファレンスで適切なのはどれか。
- 1.チームリーダーの職種は医師である。
- 2.カンファレンスにAさんの妻の参加は不要である。
- 3.Aさんのリハビリテーションの目標は医師が決定する。
- 4.Aさんのリハビリテーションの内容はチームで評価する。
対話形式の解説
博士
今日はAさんの退院に向けた多職種カンファレンスについて考えよう。Aさんは外来リハビリを継続しながら職場復帰を希望しておる。
アユム
選択肢はチームリーダーは医師、妻の参加不要、目標は医師が決定、リハビリ内容はチームで評価の4つですね。
博士
正解は4番じゃ。多職種チームでリハビリ内容を評価することが原則なんじゃ。
アユム
まず退院前カンファレンスとはどのような場なのですか。
博士
多職種が集まって患者・家族と協働し、退院後の生活を支援するための会議じゃ。入院中の経過共有、退院後の生活課題の明確化、在宅体制の構築、本人・家族の意向確認が目的となる。
アユム
医師、看護師の他にどのような職種が参加するのですか。
博士
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカー、薬剤師、管理栄養士、ケアマネジャーなどじゃな。Aさんの場合は職場復帰があるから産業医との連携も重要となる。
アユム
1番の「チームリーダーは医師」はなぜ誤りですか。
博士
多職種チームのリーダーは職種で固定されるものではないんじゃ。患者の課題や時期によって、看護師が調整役になったり、MSWが社会資源調整で中心的役割を果たしたりする。状況に応じた柔軟な役割分担が大切じゃ。
アユム
2番の「妻の参加は不要」も明らかに誤りですね。
博士
その通り。退院後の生活を支える家族の参加は必須じゃ。妻は最も身近な支援者で、介護力や生活環境、希望を確認する必要がある。Aさんは58歳で妻は55歳、就労している可能性もあるから妻自身の負担も考慮せんといかん。
アユム
3番の「目標は医師が決定する」はクライアント中心のアプローチと反しますね。
博士
リハビリの目標は本人の希望を基盤にチームで協議して決めるのが原則じゃ。Aさんは復職を希望しておるから、それを中核に据えた目標設定を行う。
アユム
本人の生活目標が中心になるんですね。ICFという枠組みもあるんですよね。
博士
よく知っておるのう。国際生活機能分類ICFでは心身機能・身体構造、活動、参加の3つの生活機能と、環境因子・個人因子の背景因子から多面的に患者を捉える。
アユム
職場復帰の場合の環境因子とは具体的に何ですか。
博士
職場の物理的環境、通勤手段、職務内容、上司・同僚の理解、産業医のサポート体制などじゃ。Aさんは会社員じゃから、これらを含めた調整が必要となる。
アユム
多職種連携の意義を改めて実感しました。
博士
チーム医療は「足し算」ではなく「掛け算」で効果を生む。各職種の視点が組み合わさることで、一人では見えない課題が見えてくるんじゃ。
アユム
看護師の役割は何でしょうか。
博士
看護師は24時間患者の最も近くにおる職種じゃから、生活全般を把握する総合的視点とチーム内の調整役を担うことが多い。Aさんの気持ちや妻との関係性も含めた情報発信が期待されておる。
アユム
患者と家族を中心に据えた多職種連携を大切にしたいです。
博士
良い姿勢じゃ。患者が主人公で、医療者はそれを支える伴走者であることを忘れないでほしいのう。
POINT
退院前カンファレンスは多職種が協働して患者・家族の退院後生活を支援する場であり、リハビリの評価と目標設定はチーム全体で行うのが原則である。チームリーダーは職種で固定されず、患者の課題に応じて柔軟に決定され、本人と家族の参加が不可欠となる。ICFの枠組みで心身機能・活動・参加・環境因子・個人因子を多面的に評価し、復職を希望する場合は職場との連携も含めた包括的な支援計画を立案する。看護師は生活全般を把握する総合的視点とチーム内調整役として重要な役割を担う。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(58歳、男性、会社員)は、妻(55歳)と2人暮らし。5年前から高血圧症(hypertention)、脂質異常症(dyslipidemia)を指摘され、降圧薬を内服していた。自宅で左半身に脱力感が出現し、救急車で搬送された。救急外来でCT及びMRI検査を行った結果、右中大脳動脈領域に脳梗塞(cerebral infarction)の所見が認められた。入院時は、グラスゴー・コーマ・スケール<GCS>E3V4M5、体温36.8°C、呼吸数16/分、脈拍66/分(不整)、血圧160/85mmHg、HbA1c5.8%、心電図では、RR間隔は不定で心拍数100/分であった。入院後、血栓溶解療法を受け、2日後からリハビリテーションが開始された。1週後には回復期リハビリテーション病棟へ転棟した。 転棟から6週が経過し、退院に向けて多職種チームでカンファレンスを開催することになった。Aさんは、外来でのリハビリテーションを継続しながら元の職場への復帰を希望している。 Aさんの退院前のカンファレンスで適切なのはどれか。
解説:正解は 4 です。退院前カンファレンスは多職種が患者・家族と協働して退院後の生活を支援するための会議で、リハビリテーションの評価はチーム全体で行うのが原則です。医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカー、薬剤師、栄養士などがそれぞれの専門性から情報を持ち寄り、多角的に評価することで最適な退院支援が可能となります。
選択肢考察
-
× 1. チームリーダーの職種は医師である。
多職種チームのリーダーは医師に限定されません。患者の課題や目標に応じて、看護師、理学療法士、医療ソーシャルワーカーなどが調整役を担うこともあり、状況に応じた柔軟な役割分担が重要です。
-
× 2. カンファレンスにAさんの妻の参加は不要である。
退院後の生活を支える家族の参加は必須です。妻はAさんの最も身近な支援者であり、退院後の介護体制や生活環境、復職支援について本人・家族の希望を確認することが支援計画の前提となります。
-
× 3. Aさんのリハビリテーションの目標は医師が決定する。
リハビリの目標設定は本人の希望を基盤にチームで相談して決めるのが原則です。Aさんは復職を希望しており、本人の生活目標を中心に据えた目標設定(クライアント中心のアプローチ)が重要です。
-
○ 4. Aさんのリハビリテーションの内容はチームで評価する。
多職種チーム医療の基本で、各職種がそれぞれの視点から評価した情報を共有し合うことで、より包括的で個別性の高い支援が可能となります。ICFの枠組みでの多面的評価が標準です。
回復期リハビリテーション病棟における退院支援の多職種チームには、医師、看護師、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、医療ソーシャルワーカー(MSW)、薬剤師、管理栄養士、介護支援専門員、歯科医師、歯科衛生士などが含まれます。退院前カンファレンスの目的は(1)入院中の経過と現状の共有、(2)退院後の生活課題の明確化、(3)在宅療養体制の構築、(4)社会資源の活用計画、(5)本人・家族の意向確認です。ICF(国際生活機能分類)では心身機能・身体構造、活動、参加の3つの生活機能と、環境因子・個人因子の背景因子から患者を多面的に捉えます。在宅復帰・復職を目指す場合は、職場の産業医や上司、介護保険のケアマネジャー、訪問看護師との連携も重要となります。
退院前カンファレンスにおける多職種チーム医療の基本原則と、本人・家族中心のアプローチを問う問題です。
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