急性期から回復期へ、転院時に最優先で渡すべき1枚の書類
看護師国家試験 第109回 午前 第119問 / 成人看護学 / 脳・神経系
国試問題にチャレンジ
次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん( 75 歳、女性)は、脂質異常症( dyslipidemia )と高血圧症( hypertension )で通院中で、定期受診のため、外来待合室で順番を待っていた。Aさんは、待合室の雑誌を取ろうと立ち上がり、歩こうとしたところ、右足が思うように動かず引きずって歩いた。外来看護師が声をかけると、Aさんは「らいじょうぶ」と返答したが、ろれつが回らなかった。 検査の結果、Aさんは左脳の運動野に脳梗塞( cerebral infarction )を発症していることが分かった。Aさんは 3 週間の入院治療を経て転院し、2 か月間のリハビリテーションを行うことになった。 転院先の医療機関に提供する情報で最も優先するのはどれか。
- 1.診療情報提供書
- 2.要介護認定の申請書
- 3.医療相談員の相談記録
- 4.使用中の車椅子の機種
- 5.身体障害者手帳の申請書
対話形式の解説
博士
Aさんは左脳運動野の脳梗塞と診断され、3週間の急性期治療を経て回復期リハ病院へ転院することになったのう。
サクラ
脳卒中の治療の流れは、急性期病院→回復期リハ病棟→生活期(自宅・施設)と続くんですよね。
博士
その通り。これを脳卒中地域連携パスと呼ぶ。切れ目のない支援を実現する仕組みじゃ。
サクラ
転院先に渡す情報としては、診療情報提供書、要介護認定申請書、MSWの相談記録、車椅子の機種、身体障害者手帳の申請書の5つですね。
博士
一つずつ検討するぞ。まず診療情報提供書とは何じゃ?
サクラ
医師が書く紹介状のことですよね。診断名、治療経過、薬、検査結果などが書かれています。
博士
そう。医師法や療養担当規則に基づく公式文書で、転院先の医師が継続治療とリハ計画を立てる基盤になる。
サクラ
なるほど、最も必要な情報ですね。
博士
脳梗塞ではどの血管領域か、病型は何か、発症時刻、使用した抗血栓薬、血圧血糖管理などがリハ計画にも直結する。
サクラ
要介護認定の申請書はどうでしょう?
博士
要介護認定は申請から認定まで約30日。Aさんは2か月のリハを行うので、その期間に並行して進めれば間に合う。転院時点で最優先ではない。
サクラ
40歳以上なら第2号被保険者ですよね。脳血管疾患は特定疾病ですから、40〜64歳でも介護保険を使えます。
博士
よく覚えておった。Aさんは75歳なので第1号被保険者じゃな。
サクラ
MSWの相談記録はどうでしょう?
博士
家族背景や社会資源の活用検討に有用じゃが、治療計画の根幹情報ではない。必要に応じて共有すればよい。
サクラ
車椅子の機種は?
博士
リハ経過でADLが変化し、使う車椅子も変わっていくから、現時点の機種情報は優先度が低い。
サクラ
身体障害者手帳の申請書は?
博士
身体障害者手帳は脳血管疾患の場合、原則として発症から6か月経過し症状が固定してから申請する。転院時点ではまだ申請できないのじゃ。
サクラ
それで診療情報提供書が最優先になるんですね。
博士
うむ。看護サマリーも併せて作成し、ADL、認知機能、褥瘡、排泄、食事、家族構成、退院支援経過などを詳細に伝える。多職種連携の土台じゃ。
サクラ
書類ひとつにも患者の回復を支える意味があるんですね。
POINT
脳梗塞の急性期治療を終えて回復期リハビリテーション病院へ転院するAさんに関し、最優先で提供すべき情報は医師が作成する診療情報提供書(紹介状)です。診断名、発症時刻、病型、治療経過、投薬、検査結果、現在の身体状況が一通りまとまっており、転院先での継続治療とリハ計画の基盤になります。要介護認定申請書、MSW相談記録、車椅子の機種、身体障害者手帳申請書は、いずれも時期を見て並行して進めるべき項目で、転院時の最優先ではありません。身体障害者手帳は発症から6か月の症状固定後に申請するのが原則、要介護認定は約30日でリハ期間中に間に合う仕組みなど、社会資源活用の時期を整理しておくと臨床現場でも役立ちます。脳卒中地域連携パスのもとで多職種が切れ目のない支援を提供するために、情報連携の優先順位を理解することは重要です。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん( 75 歳、女性)は、脂質異常症( dyslipidemia )と高血圧症( hypertension )で通院中で、定期受診のため、外来待合室で順番を待っていた。Aさんは、待合室の雑誌を取ろうと立ち上がり、歩こうとしたところ、右足が思うように動かず引きずって歩いた。外来看護師が声をかけると、Aさんは「らいじょうぶ」と返答したが、ろれつが回らなかった。 検査の結果、Aさんは左脳の運動野に脳梗塞( cerebral infarction )を発症していることが分かった。Aさんは 3 週間の入院治療を経て転院し、2 か月間のリハビリテーションを行うことになった。 転院先の医療機関に提供する情報で最も優先するのはどれか。
解説:正解は 1 です。診療情報提供書(いわゆる紹介状)は、医師が作成する公式な医療情報文書で、診断名、発症経過、治療内容、投薬、検査結果、現在の全身状態、ADL、看護上の課題などを簡潔にまとめたものです。転院先の医療機関はこれを基に継続治療・リハビリテーション計画を立てるため、最優先の情報となります。特に脳梗塞のように病型(ラクナ梗塞・アテローム血栓性・心原性塞栓)や発症時刻、使用した抗血栓薬、血圧・血糖管理内容などの情報がリハ実施上も不可欠です。
選択肢考察
-
○ 1. 診療情報提供書
転院先が最も必要とする医療情報の集約文書。脳梗塞の部位・病型、治療経過、現在の症状と機能、薬剤情報を伝え、継続治療とリハ計画の基盤となる。提供の最優先事項である。
-
× 2. 要介護認定の申請書
要介護認定は申請から認定まで約30日を要し、リハビリテーション期間中に並行して進めることが可能。現時点では2か月間のリハ入院後の在宅生活設計に合わせて申請すればよく、転院時の最優先情報ではない。
-
× 3. 医療相談員の相談記録
MSWの相談記録は家族背景や社会資源活用の検討に有用だが、転院先の治療・リハ計画立案において医療情報ほどの優先度はない。必要に応じて情報共有すればよい。
-
× 4. 使用中の車椅子の機種
リハビリ経過でADLが変化し、使用する車椅子や装具も変わっていく。転院時点での車椅子情報は参考にはなるが、治療継続や機能評価の出発点としての重要度は診療情報提供書に比べ大きく劣る。
-
× 5. 身体障害者手帳の申請書
身体障害者手帳は原則として症状固定後(脳血管疾患では発症から6か月以降)に申請できる。転院時点では申請段階になく、情報提供の最優先対象ではない。
医療連携において『診療情報提供書』は医師法・療養担当規則に基づく公式文書で、転院や紹介に必須。看護面の情報は『看護サマリー』として別途作成し、ADL、認知機能、褥瘡、排泄、食事、家族構成、退院支援経過などを詳細に記載する。急性期→回復期リハビリテーション病棟→生活期(自宅・施設)の流れは、脳卒中地域連携パスとして整備され、多職種(医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、MSW、ケアマネジャー)が切れ目のない支援を提供する仕組みになっている。要介護認定は40歳以上で第2号被保険者となり、脳血管疾患は特定疾病として40〜64歳でも認定対象となる。身体障害者手帳は脳血管疾患では発症後6か月を経て症状が固定してから申請するのが原則。
医療連携で転院先に最優先で渡すべき情報を問う問題。診療情報提供書が治療継続の根幹文書であることを理解する。介護認定や障害者手帳は時期を見て並行して進める仕組みになっている点も整理しておきたい。
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