もやもや病は『ウィリス動脈輪がゆっくり詰まっていく』日本発の指定難病
看護師国家試験 第109回 午前 第85問 / 成人看護学 / 脳・神経系
国試問題にチャレンジ
もやもや病(moyamoya disease)で正しいのはどれか。3つ選べ。
- 1.指定難病ではない。
- 2.遺伝的要因が関与する。
- 3.病変はくも膜下腔にある。
- 4.進行性の脳血管閉塞症(cerebrovascular occlusion)である。
- 5.ウイルス感染によって誘発される。
対話形式の解説
博士
今日はもやもや病を整理するぞ。
サクラ
名前が独特ですね。どうしてもやもや病と呼ばれるんですか?
博士
脳血管造影で内頸動脈終末部が狭窄・閉塞し、その周囲に側副血行路として細い血管が無数に発達する。それが煙がもやもやしたように見えることから命名されたんじゃ。別名『ウィリス動脈輪閉塞症』とも呼ばれるぞ。
サクラ
ウィリス動脈輪ってどこにあるんですか?
博士
脳底部のくも膜下腔内、視交叉の周囲にある動脈の輪状構造。内頸動脈、前大脳動脈、前交通動脈、後交通動脈、後大脳動脈などで構成される。
サクラ
だから選択肢3の『病変はくも膜下腔にある』が正解なんですね。
博士
その通り。狭窄する主幹動脈も、代償的に発達するもやもや血管も、どちらもくも膜下腔内を走行しておる。
サクラ
指定難病ですか?
博士
うむ、指定難病22に登録されており医療費助成の対象じゃ。選択肢1は×。
サクラ
遺伝するんですか?
博士
家族内発症が10〜20%にみられ、RNF213遺伝子のp.R4810Kという感受性多型が日本人で高頻度に同定されておる。ただし単純遺伝病ではなく多因子が関与するぞ。
サクラ
どんな症状で発症しますか?
博士
小児と成人で異なるのが特徴。小児は脳虚血症状が中心で、過換気で低炭酸ガス血症になると脳血管が収縮して一過性の脱力発作や片麻痺を起こす。『ハーモニカを吹いて麻痺した』などが有名じゃ。
サクラ
え、過呼吸で症状が出るんですか?
博士
そう。熱い麺をフーフー冷ますときや、泣きじゃくる、吹奏楽器演奏、運動時の過呼吸などが誘因になる。看護では『過換気させない』ことが重要じゃ。
サクラ
成人の場合は?
博士
成人は脳出血で発症することが30〜40%。側副血行路として発達したもやもや血管が脆弱で、破綻すると脳室内出血や脳内出血を起こす。
サクラ
選択肢5の『ウイルス感染で誘発』は?
博士
そのような成因は証明されていない。原因は不明だが遺伝的素因と何らかの炎症機序が関与すると考えられておる。
サクラ
治療は?
博士
虚血型には外科的血行再建術が有効。直接吻合(STA-MCAバイパス)、間接吻合(EDAS、EMS)、複合吻合などがある。出血型は厳重な血圧管理が第一じゃ。
サクラ
看護のポイントは?
博士
過換気の回避、バイタル・神経症状のこまめな観察、脱水回避、頭痛や麻痺の変化を早期発見すること。小児では家族への生活指導も重要じゃ。
POINT
もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)は日本で疾患概念が確立された指定難病22で、両側内頸動脈終末部の進行性狭窄・閉塞と、側副血行路として発達するくも膜下腔内のもやもや血管を特徴とします。RNF213遺伝子多型に代表される遺伝的素因が関与し、家族内発症も10〜20%に認められます。小児は過換気誘発性のTIAや脳梗塞(虚血型)、成人は脳室内・脳内出血(出血型)で発症しやすく、診断は脳血管造影・MRAで行い、治療は虚血型に直接/間接バイパス術、出血型に血圧管理を中心とします。看護では過換気回避、脱水予防、神経症状の早期察知が重要で、小児患者の家族支援・生活指導も欠かせません。
解答・解説
正解は 2 ・ 3 ・ 4 です
問題文:もやもや病(moyamoya disease)で正しいのはどれか。3つ選べ。
解説:正解は 2、3、4 です。もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)は指定難病22に指定されている原因不明の進行性脳血管閉塞症で、両側内頸動脈終末部の進行性狭窄・閉塞と、その周囲に側副血行路として形成されるもやもや血管を特徴とする。病変部位はくも膜下腔のウィリス動脈輪周囲の血管である。家族内発症を10〜20%に認め、RNF213遺伝子多型などの遺伝的要因の関与が明らかになっている。
選択肢考察
-
× 1. 指定難病ではない。
もやもや病は指定難病22に登録されており、医療費助成の対象疾患。日本人を中心に東アジアで多く報告されており、日本で最初に疾患概念が確立された。
-
○ 2. 遺伝的要因が関与する。
家族内発症が10〜20%に認められ、RNF213遺伝子の感受性多型(p.R4810K)が日本人で高頻度に同定されている。ただし単純なメンデル遺伝ではなく、多因子が関与する多遺伝子疾患と考えられる。
-
○ 3. 病変はくも膜下腔にある。
狭窄・閉塞する血管はウィリス動脈輪周辺の主幹動脈であり、これらはくも膜下腔を走行している。代償性に形成されるもやもや血管もくも膜下腔内の穿通枝である。
-
○ 4. 進行性の脳血管閉塞症(cerebrovascular occlusion)である。
内頸動脈終末部の狭窄は徐々に進行し、対側にも波及することが多い。小児は脳虚血症状(過換気誘発性TIA、脳梗塞)、成人は脳出血(もやもや血管破綻による脳室内出血・脳内出血)で発症する傾向がある。
-
× 5. ウイルス感染によって誘発される。
ウイルス感染と直接結びつける成因は証明されていない。原因は不明だが、遺伝的素因に加えて慢性炎症など複数の因子が関与すると考えられている。
もやもや病の特徴的な臨床所見として、小児では熱い麺をフーフー吹いて冷ますなどの過換気で低炭酸ガス血症となり脳血管が収縮、一過性脳虚血発作(脱力発作・片麻痺・構音障害)を誘発する『過換気誘発性TIA』がある。診断は脳血管造影(DSA)またはMRA。両側内頸動脈終末部〜前・中大脳動脈近位部の狭窄・閉塞と、周囲のもやもや血管の存在で診断。治療は、虚血型では外科的血行再建術(直接吻合:STA-MCA bypass、間接吻合:EDAS、EMSなど、または複合吻合)が有効。出血型は厳重な血圧管理と再出血予防。看護では過換気回避(泣かせない、吹奏楽器に注意、過呼吸発作時の対応)と頭蓋内圧亢進症状の観察が重要。
もやもや病の疾患概念・病変部位・成因・指定難病の位置づけを問う基本問題。『ウィリス動脈輪閉塞症』『過換気でTIA』『小児は虚血・成人は出血』をキーワードに整理する。
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