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ALS患者の『口から食べたい』を支える多職種連携の要

看護師国家試験 第112回 午後 第45問 / 成人看護学 / 脳・神経系

国試問題にチャレンジ

112回 午後 第45問

Aさん(58歳)は筋萎縮性側索硬化症<ALS>(amyotrophic lateral sclerosis)で在宅療養をしている。嚥下機能の低下が進行したため入院し、胃瘻の造設が検討されているが、経口摂取の継続を希望している。 看護師が連携する職種で優先度が高いのはどれか。

  1. 1.言語聴覚士
  2. 2.作業療法士
  3. 3.理学療法士
  4. 4.介護支援専門員

対話形式の解説

博士 博士

今回はALSの事例問題じゃ。58歳のAさんが嚥下障害進行で胃瘻を検討されつつも『経口摂取を続けたい』と希望しておる。

サクラ サクラ

胃瘻ではなく口から食べたい…でも嚥下機能は落ちている。難しいですね。

博士 博士

そこで看護師が連携すべき職種は誰かが問われておる。選択肢は言語聴覚士・作業療法士・理学療法士・介護支援専門員じゃ。

サクラ サクラ

理学療法士は動作訓練、作業療法士は日常生活動作、言語聴覚士は話すこと…。嚥下となると言語聴覚士でしょうか?

博士 博士

正解じゃ。言語聴覚士は『話す・聞く・食べる』の専門家で、嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査を用いた評価、咀嚼・嚥下訓練、食形態の調整、家族への食事介助指導まで担う。

サクラ サクラ

『言語』聴覚士なのに食べることも専門なんですね。意外でした。

博士 博士

名称だけ見るとそう感じるの。でも嚥下は『口からのどへ食物を送り込む』運動制御の問題じゃから、発声・構音と神経支配や筋の使い方が重なる部分が多い。STの重要な業務じゃよ。

サクラ サクラ

ALSだと嚥下障害はどう進むんですか?

博士 博士

ALSでは延髄の運動ニューロン障害で球麻痺症状が現れる。舌の萎縮、咽頭収縮力低下、食塊形成困難、嚥下反射遅延などが進行していく。誤嚥性肺炎のリスクが高まるため、食形態をペーストやとろみ食にしたり、頸部前屈位で嚥下しやすい姿勢をとったりと工夫が必要じゃ。

サクラ サクラ

それをSTが具体的に指導してくれるわけですね。

博士 博士

そうじゃ。STの評価に基づいて管理栄養士と協働して食事を組み立て、看護師が食事介助と観察を担当する。多職種連携の典型じゃな。

サクラ サクラ

作業療法士はどう関わるんですか?

博士 博士

上肢機能が落ちてスプーンが持てなくなったら自助具の選定や食事動作の工夫、環境整備で活躍する。嚥下機能そのものには直接関わらんが、自立した食事を支える重要な役割じゃ。

サクラ サクラ

理学療法士は呼吸リハビリですか?

博士 博士

そう、ALSでは呼吸筋麻痺への対処が大きなテーマじゃ。PTは胸郭可動域訓練、咳嗽介助、排痰補助などを担う。関節拘縮予防も重要な役割じゃ。

サクラ サクラ

介護支援専門員は退院後のサービス調整ですね。

博士 博士

その通り。訪問看護・訪問リハ・福祉用具などを組み合わせてケアプランを作成する。当面の嚥下課題解決より退院支援の段階で中心になる職種じゃ。

サクラ サクラ

ALSのような進行性疾患では意思決定支援も大切ですよね。胃瘻を造るかどうかとか、将来的な人工呼吸器のこととか。

博士 博士

良い視点じゃ。アドバンス・ケア・プランニング、略してACPの考え方で、患者・家族と繰り返し話し合いながら本人の価値観に沿った選択を支える。STが連携する理由には『今できる経口摂取をできるだけ続ける』という患者の希望を叶える面もある。看護の本質が問われる問題じゃな。

POINT

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動ニューロンが選択的に障害される進行性疾患で、球麻痺症状による嚥下障害が経口摂取を困難にし、最終的には栄養・呼吸管理が生命予後を規定します。本事例のAさんは嚥下機能低下が進行しつつも経口摂取継続を強く希望しており、言語聴覚士(ST)と連携して嚥下機能評価・訓練・食形態調整を行うことが最優先となります。STは嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査に基づき個別の食事プログラムを作成し、看護師は食事介助と誤嚥観察で協働します。作業療法士・理学療法士・介護支援専門員もそれぞれの専門性でチームを構成しますが、患者の『口から食べたい』という切実な希望を疾患進行の中で支えるには、STとの連携が中核となることを理解しておく必要があります。

解答・解説

正解は 1 です

問題文:Aさん(58歳)は筋萎縮性側索硬化症<ALS>(amyotrophic lateral sclerosis)で在宅療養をしている。嚥下機能の低下が進行したため入院し、胃瘻の造設が検討されているが、経口摂取の継続を希望している。 看護師が連携する職種で優先度が高いのはどれか。

解説:正解は 1 です。Aさんは嚥下機能低下が進行し胃瘻造設を検討されながらも、経口摂取継続を強く希望している。この希望を安全に叶えるためには、摂食嚥下のアセスメントと個別のリハビリ・食形態調整が不可欠である。言語聴覚士(ST)は『話す・聞く・食べる』に関する専門職で、嚥下造影検査(VF)や嚥下内視鏡検査(VE)などの評価、間接・直接嚥下訓練、食事姿勢や食形態の提案、家族指導までを担う。ALSのように嚥下障害が進行性の疾患では、STとの連携が患者の意思決定支援と安全確保の両方に直結するため優先度が最も高い。

選択肢考察

  1. 1.  言語聴覚士

    言語聴覚士は嚥下障害に対するリハビリテーションの専門職で、嚥下機能評価・訓練・食形態調整・家族指導を行う。Aさんの『経口摂取を続けたい』という希望と嚥下障害進行という課題を両立させるために最優先で連携すべき職種である。

  2. × 2.  作業療法士

    作業療法士は食事動作や更衣・入浴などの日常生活活動の再獲得を支援する。ALSで上肢機能が低下すれば自助具の選定などで重要になるが、嚥下機能そのものの評価・訓練では言語聴覚士ほどの専門性はない。

  3. × 3.  理学療法士

    理学療法士は基本動作(起き上がり・立ち上がり・歩行など)や呼吸リハビリを担う。ALSでは呼吸リハや関節拘縮予防で重要だが、嚥下機能維持を第一目的とする本事例では優先順位は言語聴覚士より低い。

  4. × 4.  介護支援専門員

    介護支援専門員(ケアマネジャー)はケアプラン作成や介護サービス調整を行う重要な職種だが、嚥下機能の直接的評価・訓練には関与しない。退院後の在宅療養体制調整で必要になるが、入院中の嚥下対応という当面の課題では優先度は下がる。

ALSは運動ニューロンが選択的に障害される進行性神経難病で、上位・下位運動ニューロンの両方が侵される。球麻痺症状として構音障害・嚥下障害が出現し、最終的には呼吸筋麻痺で生命予後を規定する。嚥下障害の進行過程では、STと連携した評価に基づく食形態調整(ペースト食・とろみ付与)、体位の工夫(頸部前屈、リクライニング位)、一口量の調整などで経口摂取期間を延ばせる。多職種チームとして医師・看護師・ST・PT・OT・管理栄養士・ソーシャルワーカー・ケアマネジャー・呼吸器療法士などが関わり、意思決定支援(胃瘻造設、人工呼吸器装着など)にはアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の視点も欠かせない。

各リハビリ専門職の役割の違いを理解し、患者の希望(経口摂取継続)と疾患特性(嚥下障害)に基づいて優先的に連携すべき職種を選ぶ問題。