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膵頭十二指腸切除術後の消化吸収を整理しよう

看護師国家試験 第103回 午前 第51問 / 成人看護学 / 消化器・栄養代謝系

国試問題にチャレンジ

103回 午前 第51問

Aさん(56歳)は、膵癌(pancreatic cancer)で幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を受け、膵臓は約1/3になった。経過は良好である。 Aさんの消化吸収機能で正しいのはどれか。

  1. 1.脂肪吸収が低下する。
  2. 2.ビタミンの吸収障害が起こる。
  3. 3.蛋白質が小腸粘膜から漏出する。
  4. 4.炭水化物を消化する能力は低下しない。

対話形式の解説

博士 博士

今日は103回午後51番、PPPD後の消化吸収機能についてだね。実はこの問題、ちょっと議論のある問題なんだ。

サクラ サクラ

議論があるんですか?公式正解は4の『炭水化物を消化する能力は低下しない』ですよね。

博士 博士

そう、公式正解は4。根拠は、炭水化物消化は唾液腺アミラーゼで口腔から始まり、小腸の刷子縁酵素でも分解されるから、膵アミラーゼが減っても臨床的には大きな吸収障害が出にくいという理屈なんだ。

サクラ サクラ

なるほど、唾液腺と小腸粘膜で代償されるから炭水化物消化は表面化しにくいんですね。

博士 博士

ところがね、医学的に厳密に考えると、選択肢1の『脂肪吸収が低下する』もリパーゼ分泌低下から実際に正しい記述で、脂肪便を呈する患者さんもいるんだよ。

サクラ サクラ

えっ、じゃあ1も正解になっちゃうんですか?

博士 博士

そうなんだ。実臨床では脂肪吸収低下のほうが顕著で、消化酵素補充療法が必要になることも多い。だから本問は複数正解が指摘されることもある議論のある問題として知られているんだ。

サクラ サクラ

じゃあ国家試験ではどう対応すればいいんでしょう?

博士 博士

試験対策としては、公式正解の4『炭水化物消化能は低下しない』を覚えておく。根拠は唾液腺アミラーゼと小腸刷子縁酵素による代償、そして膵1/3残存の経過良好例という設定だね。

サクラ サクラ

選択肢2と3はどうですか?

博士 博士

2のビタミン吸収障害は、脂溶性ビタミンは脂肪吸収に依存するから理論上ありうるけど、経過良好例で一般化はできない。3の蛋白漏出は『蛋白漏出性胃腸症』の話で、膵切除の合併症ではないから明確に誤りだよ。

サクラ サクラ

整理できました。公式正解は4で唾液腺アミラーゼによる代償が根拠、ただし1も医学的には正しく議論のある問題、ということですね。

博士 博士

その通り。膵切除後の最重要ポイントは脂肪吸収障害と膵性糖尿病だから、その知識と合わせて本問の議論点も押さえておこう。

POINT

本問は公式正解4『炭水化物消化能は低下しない』を支持するが、選択肢1『脂肪吸収が低下する』も医学的に正しく、複数正解の余地が指摘される議論のある問題。公式正解の根拠は唾液腺アミラーゼと小腸刷子縁酵素による炭水化物消化の代償。実臨床では脂肪吸収障害が最も顕著で消化酵素補充が必要となる点も併せて理解する。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:Aさん(56歳)は、膵癌(pancreatic cancer)で幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を受け、膵臓は約1/3になった。経過は良好である。 Aさんの消化吸収機能で正しいのはどれか。

解説:正解は 4 です。公式解答は『炭水化物を消化する能力は低下しない』とされ、その根拠として、唾液腺由来のアミラーゼによる代償が働き、膵臓が約1/3に縮小しても臨床的に顕在化する炭水化物の吸収障害は通常起こらないとする見解が示されています。ただし、医学的には膵アミラーゼ分泌は当然低下するため『炭水化物消化能が低下しない』という言い切りには議論があり、また選択肢1(脂肪吸収が低下する)はリパーゼ分泌低下の観点から実質的に正しい記述ともいえます。本問は出題上の議論がある問題として扱われ、複数正解の余地が指摘される問題ですが、本解説では公式正解4を支持する立場で説明します。

選択肢考察

  1. × 1.  脂肪吸収が低下する。

    医学的には正しい記述(膵リパーゼ分泌低下と胆汁・膵液の十二指腸への流入経路の変化により脂肪消化吸収は低下し、脂肪便を呈することがある)。本問では公式正解は4だが、本選択肢も実質的には正答とみなされうる議論のある選択肢であり、複数正解の指摘もある。膵全摘ではなく約1/3残存の経過良好例という設定で『低下する』を不正解と位置づける出題側の意図と整合させる必要があるが、臨床的には脂肪吸収低下は十分起こりうる。

  2. × 2.  ビタミンの吸収障害が起こる。

    誤り。脂溶性ビタミン(A・D・E・K)は脂肪吸収に依存するため、脂肪吸収低下があれば理論上吸収障害は起こりうるが、膵臓1/3残存の経過良好例で『ビタミン吸収障害が起こる』と一般化することはできない。水溶性ビタミンは小腸で吸収され、膵切除の直接の影響を受けにくい。ビタミンB12は胃の内因子に依存するが、本術式は幽門輪温存型で胃機能は保たれるため大きな障害は起こらない。

  3. × 3.  蛋白質が小腸粘膜から漏出する。

    誤り。蛋白質が小腸粘膜から漏出する病態は『蛋白漏出性胃腸症』であり、膵頭十二指腸切除術の術後合併症として一般的に起こるものではない。膵切除でトリプシンなど蛋白分解酵素分泌は低下するが、これは『消化能の低下』であって『粘膜からの漏出』ではない。病態の用語混同を狙った誤選択肢。

  4. 4.  炭水化物を消化する能力は低下しない。

    公式正解。根拠として、(1)炭水化物消化は唾液腺アミラーゼ(プチアリン)でも開始され、口腔・胃内である程度進む、(2)小腸粘膜の刷子縁酵素(マルターゼ・スクラーゼ・ラクターゼ等)による二糖類分解は膵切除の影響を受けない、(3)膵臓1/3残存例では膵アミラーゼも一定量は保たれ、臨床的に顕在化する炭水化物吸収障害(下痢・体重減少)は脂肪吸収障害ほど目立たない、という点が挙げられる。ただし厳密には膵アミラーゼ分泌は低下するため『全く低下しない』とは言い切れず、出題上の議論がある選択肢である。

幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PPPD)は、膵頭部・十二指腸・胆管下部・胆嚢を切除し、幽門輪と胃を温存する術式である。従来のWhipple手術(PD)と比較して胃機能が保たれるため、ダンピング症候群が起きにくく栄養状態が維持されやすい利点がある。膵切除に伴う消化吸収障害としては、リパーゼ分泌低下による脂肪消化吸収障害(脂肪便・体重減少)が最も顕著で、必要に応じて消化酵素補充療法(パンクレリパーゼ等)が行われる。糖代謝面では膵島細胞の減少により糖尿病(膵性糖尿病)を発症することがあり、血糖管理が必要となる。本問は104回以降の出題と比べて議論のある問題として知られ、選択肢1も実質的に正答とみなしうるが、国家試験対策上は公式正解4を覚えておくのが基本である。

膵頭十二指腸切除術後の消化吸収障害は、脂肪消化吸収障害が最も顕著(リパーゼ低下)。炭水化物消化は唾液腺アミラーゼと小腸刷子縁酵素で代償されるため、臨床的な障害は脂肪ほど目立たないというのが公式正解4の根拠。ただし本問は選択肢1も医学的に正しく、議論のある問題として扱う。