胃食道逆流症まるわかり―PPIとバレット食道を押さえよう
看護師国家試験 第106回 午後 第77問 / 成人看護学 / 消化器・栄養代謝系
国試問題にチャレンジ
胃食道逆流症( gastro - esophageal reflux disease )について正しいのはどれか。2つ選べ。
- 1.食道の扁平上皮化生を起こす。
- 2.上部食道括約筋の弛緩によって生じる。
- 3.食道炎( esophagitis )の程度と症状の強さが一致する。
- 4.プロトンポンプ阻害薬が第一選択の治療法である。
- 5.Barrett〈バレット〉上皮は腺癌の発生リスクが高い。
対話形式の解説
博士
今日は胃食道逆流症、略してGERDの問題じゃ。どんな病気か知っておるかな?
サクラ
胸やけ…ですよね?胃酸が上がってきて食道を荒らす。
博士
その通り。原因は下部食道括約筋(LES)圧の低下や一過性弛緩で、胃内容物が食道に逆流するのじゃ。
サクラ
上部食道括約筋じゃないんですね。
博士
そう、そこが選択肢2の引っ掛けじゃ。上部食道括約筋は嚥下のスタート部分にあって、逆流には関与せん。
サクラ
症状は胸やけと呑酸、でしたよね。
博士
うむ。さらに胸痛、慢性咳嗽、嗄声などの食道外症状もある。喘息と間違われることもあるのじゃ。
サクラ
診断は内視鏡ですか?
博士
内視鏡で粘膜障害を確認できる『逆流性食道炎』と、粘膜障害がない『非びらん性GERD(NERD)』に分けられる。面白いのは、粘膜の傷と症状の強さは必ずしも一致せんことじゃ。
サクラ
え、そうなんですか?傷が深いほど痛そうなのに…。
博士
そこが選択肢3のポイント。症状が強くても内視鏡所見は軽度ということも、逆のこともよくある。
サクラ
治療は何ですか?
博士
第一選択はプロトンポンプ阻害薬(PPI)。胃酸分泌の最終段階、プロトンポンプを強力に阻害するのじゃ。
サクラ
H2ブロッカーもありましたよね?
博士
H2ブロッカーはヒスタミンH2受容体を遮断して胃酸分泌を抑えるが、PPIの方が効果が強く、GERDでは第一選択はPPIじゃ。
サクラ
バレット食道って何ですか?
博士
良い質問じゃ。長期に胃酸逆流が続くと食道下部の扁平上皮が円柱上皮に置き換わる。これをBarrett上皮と言い、食道腺癌の前癌病変じゃ。
サクラ
だから定期検査が必要なんですね。
博士
うむ、1〜2年ごとの内視鏡サーベイランスが推奨される。日本では食道癌の大半は扁平上皮癌じゃが、欧米ではBarrett由来の腺癌が増加中なのじゃ。
サクラ
生活指導も大切そうですね。
博士
頭部挙上、就寝前3時間の飲食回避、過食・高脂肪食・アルコール・コーヒー・チョコ・炭酸・喫煙を控える、肥満改善、きつい服装を避ける。看護師は服薬指導と生活指導が大事なのじゃ。
サクラ
薬だけでなく生活習慣から支援する視点が大切ですね!
POINT
胃食道逆流症(GERD)は下部食道括約筋(LES)圧低下により胃内容物が食道に逆流して起こる疾患で、症状は胸やけ・呑酸・胸痛・慢性咳嗽などです。内視鏡所見と症状の強さは必ずしも一致せず、びらんを伴わない非びらん性GERD(NERD)もあります。治療の第一選択は胃酸分泌を強力に抑制するプロトンポンプ阻害薬(PPI)で、生活指導(頭部挙上、就寝前3時間の飲食回避、肥満改善、刺激物制限)を併用します。長期の逆流は食道下部の扁平上皮を円柱上皮に変えるBarrett食道を引き起こし、食道腺癌の前癌病変として定期内視鏡サーベイランスが推奨される点も、看護指導の重要ポイントです。
解答・解説
正解は 4 ・ 5 です
問題文:胃食道逆流症( gastro - esophageal reflux disease )について正しいのはどれか。2つ選べ。
解説:正解は 4 と 5 です。胃食道逆流症(GERD)は下部食道括約筋(LES)圧の低下や一過性弛緩により胃内容物が食道に逆流し、胸やけ・呑酸・胸痛などを生じる疾患です。治療は生活指導(頭部挙上、就寝前3時間以内の食事回避、肥満の改善、禁煙、脂肪食・アルコール・チョコレート・カフェインの制限)と薬物療法が中心で、胃酸分泌を最も強力に抑制するプロトンポンプ阻害薬(PPI)が第一選択となります。長期の逆流で食道下部の扁平上皮が円柱上皮(腸上皮化生)に置換されたものがBarrett(バレット)食道で、食道腺癌の前癌病変と位置付けられ発癌リスクが高いため定期的な内視鏡サーベイランスが推奨されます。
選択肢考察
-
× 1. 食道の扁平上皮化生を起こす。
本来食道粘膜は重層扁平上皮。GERDで起こる化生は扁平上皮から円柱上皮(腸上皮化生)への変化で、これをBarrett上皮という。『扁平上皮化生』という記載は誤り。
-
× 2. 上部食道括約筋の弛緩によって生じる。
GERDの原因は下部食道括約筋(LES)の圧低下や一過性弛緩。上部食道括約筋の弛緩ではなく、胃と食道の境界にあるLESの機能不全が本質。
-
× 3. 食道炎( esophagitis )の程度と症状の強さが一致する。
内視鏡所見(粘膜障害の程度)と自覚症状の強さは必ずしも一致しない。粘膜障害がないのに症状が強い非びらん性GERD(NERD)や、逆に粘膜障害が強くても症状の乏しい例もある。
-
○ 4. プロトンポンプ阻害薬が第一選択の治療法である。
PPI(オメプラゾール、ランソプラゾール等)は胃酸分泌の最終段階であるプロトンポンプを不可逆的に阻害し最強の制酸効果を持つ。GERD治療ガイドラインでも第一選択。
-
○ 5. Barrett〈バレット〉上皮は腺癌の発生リスクが高い。
長期の胃酸逆流で食道下部の扁平上皮が円柱上皮(Barrett上皮)に置換される。これは食道腺癌の前癌病変であり、定期的な内視鏡サーベイランスが推奨される。
GERDの生活指導:①頭部挙上(15〜20cm)、②就寝前3時間は飲食しない、③過食・高脂肪食・アルコール・チョコレート・カフェイン・炭酸飲料・喫煙を避ける、④肥満改善、⑤腹部を締め付ける服装を避ける。食道癌のうち日本では扁平上皮癌が多数を占めるが、欧米ではBarrett食道由来の腺癌が増加。PPIが効果不十分な場合はH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)併用や内視鏡治療、腹腔鏡下噴門形成術(Nissen手術)を検討。
GERDの病態(LES圧低下)、症状と内視鏡所見の非一致、第一選択薬(PPI)、Barrett食道と食道腺癌リスクという要点を押さえる問題。
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