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肝動脈塞栓術TAEが狙うもの 肝細胞癌の血行動態を味方にする治療

看護師国家試験 第109回 午前 第44問 / 成人看護学 / 消化器・栄養代謝系

国試問題にチャレンジ

109回 午前 第44問

肝動脈塞栓術〈 TAE 〉の適応となる疾患はどれか。

  1. 1.脂肪肝( fatty liver )
  2. 2.急性A型肝炎( acute hepatitis A )
  3. 3.肝細胞癌〈 HCC 〉( hepatocellular carcinoma )
  4. 4.アメーバ性肝膿瘍( amoebic abscess of the liver )

対話形式の解説

博士 博士

今日は肝動脈塞栓術、略してTAEについて学ぼう。どんな治療か想像できるかの?

アユム アユム

肝臓の動脈を詰める治療、ですよね。でも、肝臓の血を止めて大丈夫なんですか?

博士 博士

そこが肝臓の面白いところじゃ。正常肝は門脈から70〜80%、肝動脈から20〜30%の血流を受けておる。つまり肝動脈を一部詰めても正常肝は門脈でやっていけるのじゃ。

アユム アユム

なるほど!でも肝細胞癌は違うんですか?

博士 博士

その通り。肝細胞癌は新生血管を肝動脈から引き込み、動脈血にほぼ依存する。だから肝動脈の枝だけを選択的に詰めれば腫瘍だけを兵糧攻めにできる。

アユム アユム

どうやって動脈を詰めるんですか?

博士 博士

鼠径部の大腿動脈からカテーテルを入れて腹腔動脈、肝動脈、さらに腫瘍を栄養する細い枝まで進める。そこからゼラチンスポンジやビーズなどの塞栓物質、さらに抗がん剤を注入するのが標準的じゃ。抗がん剤を混ぜる場合はTACEと呼ぶ。

アユム アユム

他の選択肢、脂肪肝やA型肝炎、アメーバ性肝膿瘍はどうでしょう?

博士 博士

脂肪肝は生活習慣改善が基本、A型肝炎は自然治癒が期待される急性ウイルス感染、アメーバ性肝膿瘍はメトロニダゾールなどの抗原虫薬が第一選択じゃ。どれも動脈塞栓とは無縁じゃな。

アユム アユム

肝細胞癌の治療にはTAE以外にもいろいろありますよね?

博士 博士

BCLC分類という国際的な病期分類に沿って、早期なら肝切除・ラジオ波焼灼・肝移植、中間期で切除不能ならTACE、進行期ではレンバチニブやアテゾリズマブ+ベバシズマブなどの全身療法が選ばれる。

アユム アユム

TAEのあとにはどんな合併症がありますか?

博士 博士

塞栓後症候群と呼ばれる発熱・腹痛・悪心・肝酵素上昇が典型的で、数日で軽快することが多い。胆嚢虚血や胃十二指腸潰瘍、腎機能障害、出血なども起こりうる。

アユム アユム

看護のポイントはどこでしょう?

博士 博士

穿刺部の圧迫と下肢の屈曲禁、出血・血腫の観察、バイタル・疼痛・発熱のモニタリング、造影剤による腎障害予防の補液、そして肝機能悪化への備えじゃ。

アユム アユム

肝細胞癌の背景に肝硬変があることが多いから、肝予備能を意識した看護が大切なんですね。

博士 博士

まさに。Child-Pugh分類で肝予備能を評価し、治療前後で黄疸・腹水・肝性脳症の兆候を見逃さぬことが肝要じゃ。

POINT

肝動脈塞栓術(TAE)は、肝細胞癌が動脈血供給に依存する血行動態を利用し、腫瘍栄養動脈を選択的に塞栓して腫瘍を壊死させる治療法である。抗がん剤を併用するTACEを含め、切除不能・多発性の肝細胞癌で標準的に用いられ、BCLC分類の中間期に位置づけられる。脂肪肝・A型肝炎・アメーバ性肝膿瘍はそれぞれ生活指導・対症療法・抗原虫薬が基本であり、血管内治療の適応ではない。術後は塞栓後症候群や肝機能悪化に注意し、穿刺部管理とバイタル観察、肝予備能評価に基づく全身管理が看護の鍵となる。

解答・解説

正解は 3 です

問題文:肝動脈塞栓術〈 TAE 〉の適応となる疾患はどれか。

解説:正解は 3 です。肝動脈塞栓術(TAE: Transcatheter Arterial Embolization)は、大腿動脈などから挿入したカテーテルを腹腔動脈・肝動脈へ進め、腫瘍を栄養する枝に塞栓物質を注入して腫瘍血流を遮断し壊死させる治療法である。正常肝実質は約70〜80%を門脈血に依存し、動脈血依存度は20〜30%にすぎないが、肝細胞癌は動脈血の供給を強く受けるという血行動態の違いを利用した選択的治療である。抗がん剤を併用する肝動脈化学塞栓療法(TACE)が一般的で、切除不能あるいは多発性の肝細胞癌、特にBCLCステージB(中間期)症例の標準治療の一つとされる。

選択肢考察

  1. × 1.  脂肪肝( fatty liver )

    肝細胞に中性脂肪が蓄積する疾患で、食事療法・運動療法・原因疾患の治療が基本。血管内治療の適応ではない。

  2. × 2.  急性A型肝炎( acute hepatitis A )

    HAVによる急性肝炎で、安静・補液などの対症療法で自然軽快することがほとんど。塞栓術の対象ではない。

  3. 3.  肝細胞癌〈 HCC 〉( hepatocellular carcinoma )

    肝細胞癌は肝動脈からの血流に富み、TAE/TACEにより選択的に腫瘍血流を遮断して壊死させることができる。切除不能例や多発例で標準的に用いられる。

  4. × 4.  アメーバ性肝膿瘍( amoebic abscess of the liver )

    赤痢アメーバ感染による膿瘍で、メトロニダゾールなどの抗原虫薬が第一選択。必要時に膿瘍ドレナージを行うが、動脈塞栓術は行わない。

肝細胞癌の治療はBarcelona Clinic Liver Cancer(BCLC)分類に基づき、早期(単発・小型)は肝切除・ラジオ波焼灼術(RFA)・肝移植、中間期(多発)はTACE、進行期は分子標的薬(ソラフェニブ、レンバチニブなど)や免疫チェックポイント阻害薬が選択される。TAE/TACEの合併症には発熱・肝機能悪化・腹痛・悪心からなる塞栓後症候群、胆嚢炎、非標的塞栓による十二指腸潰瘍などがあり、術後は安静・補液と肝機能・疼痛・発熱の観察が重要である。

TAEは肝細胞癌の動脈血依存性を利用した治療であることを理解しているかが問われる。肝疾患の治療選択を整理しておく。