食道癌は『酒・たばこ・胸部中部』 日本特有の疫学をつかむ
看護師国家試験 第109回 午前 第83問 / 成人看護学 / 消化器・栄養代謝系
国試問題にチャレンジ
食道癌( esophageal cancer )で正しいのはどれか。2 つ選べ。
- 1.女性に多い。
- 2.日本では腺癌が多い。
- 3.放射線感受性は低い。
- 4.飲酒は危険因子である。
- 5.胸部中部食道に好発する。
対話形式の解説
博士
今日は食道癌を疫学からおさらいするぞ。
サクラ
食道癌って男性に多いイメージですが正しいですか?
博士
正しい。男女比はおよそ5〜6:1で圧倒的に男性優位。喫煙・飲酒習慣の差が反映されておる。
サクラ
組織型は?欧米の本だと腺癌が多いって書いてあったような…。
博士
鋭いぞ。国による違いが大きい問題じゃ。日本では扁平上皮癌が90%以上、腺癌は5%以下。欧米では逆流性食道炎・Barrett食道を背景にした下部食道腺癌が増えておる。
サクラ
日本で扁平上皮癌が多いのはなぜですか?
博士
飲酒・喫煙・熱い飲食物の習慣、そしてALDH2欠損型の日本人が多いことが関係する。お酒を飲むと顔が赤くなる『フラッシャー』の人は、アセトアルデヒドを分解しにくく、発癌リスクが何倍にもなるんじゃ。
サクラ
好発部位は?
博士
日本人では約半数が胸部中部食道(Mt)、次いで下部(Lt)。気管分岐部や大動脈弓と接する場所じゃから、進行癌では浸潤や気管食道瘻が問題になる。
サクラ
選択肢3の『放射線感受性は低い』も×ですね。
博士
その通り。扁平上皮癌は放射線感受性が高く、化学放射線療法(CRT)は根治的治療選択肢の一つじゃ。
サクラ
症状はどんなものが出ますか?
博士
早期はほぼ無症状。進行すると嚥下時のつかえ感、体重減少、胸背部痛、反回神経浸潤による嗄声、気管食道瘻による咳嗽などが出現する。
サクラ
診断と治療は?
博士
内視鏡でヨード染色やNBIを使って早期発見する。表在癌ならESD、T1b以深ならDCF療法などの術前化学療法+食道亜全摘、あるいはCRTが標準じゃ。
サクラ
食道癌の手術は大きいと聞きます。
博士
胸部・腹部・頸部の三領域郭清を伴う長時間手術で、術後は肺炎・縫合不全・反回神経麻痺による嚥下障害が起こりやすい。看護では早期離床、呼吸訓練、嚥下訓練が鍵じゃ。
サクラ
予防の観点では?
博士
禁煙・節酒、野菜・果物摂取、熱い飲食物の温度に注意、そして検診での上部消化管内視鏡。特に頭頸部癌既往のある人は食道癌重複の危険が高く定期検査が重要じゃ。
サクラ
酒・たばこ・中部食道、と覚えておきます。
POINT
日本の食道癌は組織型の90%以上が扁平上皮癌で、男性に多く、飲酒と喫煙が最大の危険因子となります。特にALDH2欠損(フラッシャー)体質の人ではアセトアルデヒドの蓄積により発癌リスクが大きく上昇します。好発部位は胸部中部食道(約半数)、次いで胸部下部食道で、気管や大動脈弓に近接するため進行癌では周囲臓器浸潤が問題となります。扁平上皮癌は放射線感受性が高く、早期は内視鏡治療、進行癌は化学放射線療法や三領域郭清を伴う食道亜全摘が中心で、術後の肺炎・嚥下障害・反回神経麻痺などへの看護が重要です。欧米の下部食道腺癌との違いを押さえることも国試・臨床双方で大切なポイントです。
解答・解説
正解は 4 ・ 5 です
問題文:食道癌( esophageal cancer )で正しいのはどれか。2 つ選べ。
解説:正解は 4 と 5 です。日本の食道癌は組織型の90%以上が扁平上皮癌で、飲酒と喫煙が最大の危険因子である。特にアルコール代謝に関わるALDH2欠損型(フラッシャー)は相加的にリスクが高まる。好発部位は約半数が胸部中部食道で、次いで胸部下部食道。初期は無症状で、進行すると嚥下時のつかえ感、体重減少、胸部・背部痛、嗄声などを呈する。
選択肢考察
-
× 1. 女性に多い。
食道癌は男性に圧倒的に多く、男女比はおよそ5〜6:1。喫煙・飲酒習慣の男女差が反映されている。
-
× 2. 日本では腺癌が多い。
日本では扁平上皮癌が90%以上を占め、腺癌は5%以下。欧米では逆に逆流性食道炎・Barrett食道を背景とした下部食道腺癌が増加傾向にある。
-
× 3. 放射線感受性は低い。
扁平上皮癌は放射線感受性が高く、化学放射線療法(CRT)は手術と並ぶ標準治療の一つ。
-
○ 4. 飲酒は危険因子である。
飲酒は喫煙と並ぶ最大の危険因子。ALDH2欠損型でアルコールを飲むと血中アセトアルデヒド濃度が高まり、発癌リスクが著増する。熱い飲食物の習慣や野菜・果物不足も関与。
-
○ 5. 胸部中部食道に好発する。
日本人の食道癌の約半数が胸部中部食道(Mt)に発生し、次いで下部(Lt)が多い。解剖学的に気管分岐部や左主気管支・大動脈弓と接するため、進行癌では周囲臓器浸潤をきたしやすい。
食道は頸部(Ce)、胸部上部(Ut)、胸部中部(Mt)、胸部下部(Lt)、腹部(Ae)に区分される。粘膜筋板より深い病変は粘膜下層に豊富なリンパ管を介して広範囲にリンパ節転移をきたしやすい。早期発見にはヨード染色や狭帯域光観察(NBI)が有用。治療は表在癌なら内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)、進行癌なら手術+術前化学療法(DCF療法など)や化学放射線療法が中心。術後は反回神経麻痺による嗄声・嚥下障害、吻合部縫合不全、肺炎などの合併症に注意する。
日本における食道癌の疫学・組織型・好発部位・危険因子を問う基本問題。欧米(腺癌優位)との違いと、扁平上皮癌に対する放射線感受性の高さが要点。
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