障害に応じたコミュニケーション技法
看護師国家試験 第105回 午前 第37問 / 基礎看護学 / 看護における基本技術
国試問題にチャレンジ
患者の状態と看護師のコミュニケーションの方法との組合せで正しいのはどれか。
- 1.構音障害 ―――――――― 発音を促す
- 2.聴力障害 ―――――――― 後方から声をかける
- 3.認知症(dementia) ――― 患者のペースに合わせて話す
- 4.失語 ―――――――――― 言葉の誤りを繰り返し訂正する
対話形式の解説
博士
今日は障害別のコミュニケーションじゃ。患者の状態に合わせた関わりを考えてみよう。
サクラ
まず構音障害と発音を促すという組合せは正しいでしょうか。
博士
それは誤りじゃ。構音障害は発声発語器官の運動障害で、本人は発音したくてもうまく言葉にならん。無理に発音させても苦痛が増すだけ。筆談や文字盤、閉じた質問が有効じゃ。
サクラ
閉じた質問というのは。
博士
はい・いいえで答えられる質問のことじゃ。「お水飲みますか」と聞けば「はい」「いいえ」と首で示せる。開いた質問は答えにくいからの。
サクラ
選択肢2の聴力障害に後方から声をかけるというのは。
博士
これも誤り。聴力障害では正面から近づき、口元が見える位置で話す。後ろからでは気づきにくく驚かせてしまう。
サクラ
補聴器も併用するのですか。
博士
そうじゃ。補聴器の装着確認、ジェスチャーや筆談の併用、周囲の雑音を減らすなども効果的じゃ。
サクラ
選択肢3の認知症患者に患者のペースに合わせて話すというのが正解ですね。
博士
その通り、これが正解。認知症患者は情報処理に時間がかかり、急かされると混乱するのでペースを尊重することが基本じゃ。
サクラ
他にどんな配慮が必要ですか。
博士
短い文で具体的に、穏やかな口調で。否定や叱責は避け、できたことを認める。視覚情報を併用し、一度に複数の指示は出さないことも大切じゃ。
サクラ
選択肢4の失語症で言葉の誤りを繰り返し訂正するはどうですか。
博士
これは誤り。訂正を繰り返せば患者は自尊心を傷つけられ、話す意欲を失う。内容を汲み取り受容する姿勢が必要じゃ。
サクラ
失語症にはどんな種類がありますか。
博士
大きく分けて運動性失語と感覚性失語がある。運動性はブローカ失語とも呼び、理解はできるが発語困難。感覚性はウェルニッケ失語で流暢に話すが内容が意味不明で理解も困難じゃ。
サクラ
タイプによって対応も変わりそうですね。
博士
運動性失語ではイエス・ノーで答えられる質問や絵カードが有効、感覚性失語ではジェスチャーや短い言葉でゆっくり話すことが有効じゃ。
サクラ
コミュニケーションの基本は相手を尊重することですね。
博士
そうじゃ。患者の障害を理解し個別性に応じた工夫をするのが看護の基本じゃぞ。
サクラ
正解は3の認知症には患者のペースに合わせて話すですね。
博士
よく整理できておる。それぞれの特徴と対応をセットで覚えておくのじゃ。
POINT
構音障害には筆談や文字盤、聴力障害には正面から口元を見せ、失語症には言い間違いを訂正せず受容し、認知症には患者のペースに合わせて短い文で穏やかに話すのが基本です。障害の特性を理解し個別性に応じた関わりが看護の基本です。本問の正解は選択肢3で、それぞれの誤りの理由も押さえておきましょう。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:患者の状態と看護師のコミュニケーションの方法との組合せで正しいのはどれか。
解説:正解は3です。認知症患者は情報処理速度や記憶機能が低下しており、言葉の理解や返答に時間がかかります。急かされると混乱や不安が強まりBPSD(行動・心理症状)を誘発することもあるため、患者のペースに合わせて短い文でゆっくり、穏やかな口調で話しかけることが基本的な対応となります。
選択肢考察
-
× 1. 構音障害 ―――――――― 発音を促す
誤りです。構音障害は発声発語器官の運動障害により明瞭に発音できない状態で、発音を促しても改善しません。筆談や文字盤、閉じた質問(はい・いいえで答えられる質問)を活用するのが適切です。
-
× 2. 聴力障害 ―――――――― 後方から声をかける
誤りです。聴力障害のある患者には正面から近づき、口元の動きが見える位置でゆっくりはっきり話しかけることが基本です。後方からの声かけは気づきにくく驚かせる恐れがあります。
-
○ 3. 認知症(dementia) ――― 患者のペースに合わせて話す
正しい記述です。認知症患者には患者のペースを尊重し、短い文で具体的に、穏やかな口調で話すことが適切です。否定せず、失敗を責めない関わりも重要です。
-
× 4. 失語 ―――――――――― 言葉の誤りを繰り返し訂正する
誤りです。失語症患者の言い間違いを繰り返し訂正することは自尊心を傷つけ、話す意欲を失わせます。発言を受け止め、理解できた内容を確認する姿勢が大切です。
失語症は大きく運動性失語(ブローカ失語:理解はできるが発語が困難)と感覚性失語(ウェルニッケ失語:流暢だが内容が不明瞭で理解も困難)に分かれます。聴覚障害では補聴器やジェスチャーの併用、明るい場所でのコミュニケーションも有効です。
疾患・障害の特性に応じた適切なコミュニケーション技法を選択できるかを問う問題です。
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