死後の処置の基本と葬送の慣習
看護師国家試験 第108回 午後 第34問 / 基礎看護学 / 看護における基本技術
国試問題にチャレンジ
死後の処置で適切なのはどれか。
- 1.枕は氷枕にする。
- 2.義歯を装着する。
- 3.肛門には青梅綿、脱脂綿の順で詰める。
- 4.和装の更衣の場合、襟は右前に合わせる。
対話形式の解説
博士
今日は死後の処置、いわゆるエンゼルケアについて学ぶぞ。故人の尊厳を守り、遺族との最後の別れを穏やかにするための大切なケアじゃ。
アユム
博士、正解は義歯を装着するなんですね。
博士
そうじゃ。義歯がないと頬がこけて生前の顔と印象が大きく変わってしまう。口腔ケアのあと義歯を装着し、口を閉じることで自然な顔貌を保てるのじゃ。
アユム
1の氷枕はどうして使わないのですか。
博士
氷枕は結露で濡れが生じて臭いの原因になる。それに遺体を冷やす目的で氷枕を用いることはない。体位保持が必要なら通常の枕を使うのじゃ。
アユム
3の肛門への綿詰めの順序が『青梅綿、脱脂綿の順』は誤りなのですね。
博士
そのとおり。正しくは脱脂綿が先、青梅綿が後じゃ。脱脂綿は油分が除かれておるから水分をよく吸う。青梅綿は油分を残した綿で水をはじく性質がある。
アユム
なるほど、水分を脱脂綿で吸って、奥に油のバリアを作るんですね。
博士
そうじゃ。これで体液の漏出を防げる。鼻腔・口腔・膣も同様の順で詰めるのが基本じゃ。
アユム
4の和装で襟を右前に合わせるのが誤りなのはなぜでしょう。
博士
これは日本の葬送慣習『逆さ事』に関わる。生者は右前じゃが、死装束は左前に合わせる。死は生の逆という考え方から、普段と逆さまにするのじゃ。
アユム
帯の結び方も逆になるんですか。
博士
よく気づいたの。帯は縦結びにする。これも逆さ事の一つじゃ。
アユム
死後硬直が始まる前に処置をするのですよね。
博士
そのとおり、死後硬直は2〜3時間で始まるから、処置は早めに行う。関節が固くなる前に着衣を整えるのが肝要じゃ。
アユム
感染症の患者さんでも死後の処置は同じですか。
博士
標準予防策に加えて経路別予防策は継続する。例えば結核患者ならN95マスクを使用したまま処置するのじゃ。
アユム
遺族への配慮も大切ですよね。
博士
そうじゃ。可能なら遺族に参加してもらい一緒にケアを行うことも、グリーフケアとして大切なことじゃ。
POINT
死後の処置では義歯を装着して自然な顔貌を保つことが正解です。綿詰めは脱脂綿→青梅綿の順、和装は左前・帯は縦結びという逆さ事の慣習を守ります。氷枕は使用せず通常の枕を用い、死後硬直前に手早く整えます。故人の尊厳と遺族のグリーフケアを念頭に丁寧に行うことが看護師の重要な役割です。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:死後の処置で適切なのはどれか。
解説:正解は 2 です。死後の処置(エンゼルケア)は、故人の尊厳を守り、遺族との最後の別れが穏やかにできるよう、生前の姿に近い状態に整える看護技術です。義歯を装着することで頬のこけを防ぎ、表情を自然に整えることができ、家族とのお別れの時間をより良いものとするために重要なケアです。
選択肢考察
-
× 1. 枕は氷枕にする。
氷枕は結露で濡れが生じ死臭の原因になるため使いません。通常の枕を使用し、口が開く場合は枕を高くしたり顎下にタオルを挟みます。
-
○ 2. 義歯を装着する。
口腔ケアのあと義歯を装着すると頬のこけが防げ、生前に近い自然な顔貌に整えることができます。
-
× 3. 肛門には青梅綿、脱脂綿の順で詰める。
順序が逆です。水分を吸収する脱脂綿を先に詰め、油分を含み水をはじく青梅綿を奥に詰めて漏出を防ぎます。
-
× 4. 和装の更衣の場合、襟は右前に合わせる。
死装束は『左前』に合わせます。右前は生者の着方で、死は生の逆とする『逆さ事』の慣習に基づきます。
死後の処置の標準的な流れは、家族への声かけ→全身清拭→鼻腔・口腔・肛門・膣への綿詰め(脱脂綿→青梅綿の順)→整容(男性は髭剃り、女性は薄化粧)→義歯装着→更衣(和装なら左前、帯は縦結び)→搬送の順です。死後硬直は死後2〜3時間で始まるため、処置は早めに行います。感染症患者の場合は標準予防策に加えて経路別予防策を継続する必要があります。
死後の処置の基本手技と、日本の葬送慣習(逆さ事)に基づく和装の扱いを問う問題です。
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