便秘患者の腹部打診
看護師国家試験 第108回 午前 第37問 / 基礎看護学 / 看護における基本技術
国試問題にチャレンジ
便秘を訴えている患者の打診のアセスメント項目で適切なのはどれか。
- 1.固い腫瘤
- 2.筋性防御
- 3.叩打痛
- 4.鼓腸
対話形式の解説
博士
今日は腹部アセスメントの中でも打診について学ぼう。便秘のある患者さんが題材だ。
サクラ
博士、腹部診察の順序って決まってるんですか?
博士
そうだよ。視診→聴診→打診→触診の順が原則だ。聴診を触診より先に行うのは、触診で腸蠕動音が変化するのを避けるためなんだ。
サクラ
打診って何がわかるんですか?
博士
身体表面を叩いて音で内部を推定するんだ。鼓音はガス、濁音は便や実質臓器・液体、清音は正常肺を示す。
サクラ
正解は何番ですか?
博士
正解は4番「鼓腸」だよ。meteorismといって腸管内ガス貯留による腹部膨満で、打診で太鼓のような響く鼓音を聴取するんだ。
サクラ
便秘でもガスが溜まるんですか?
博士
便秘では便の通過遅延に伴いガスも滞留し、腸内細菌の発酵でさらにガスが増える。便貯留部は濁音、ガス貯留部は鼓音と使い分けられるよ。
サクラ
選択肢1の固い腫瘤はどうですか?
博士
腫瘤の硬さや可動性、圧痛は触診で評価する項目だ。打診では腫瘤の存在で濁音域が拡大することは推定できるが、硬さそのものは分からないんだ。
サクラ
選択肢2の筋性防御は?
博士
筋性防御は腹膜刺激徴候の一つで、腹膜炎や腹腔内出血で腹壁が反射的に緊張する現象だ。これも触診で評価する所見で、便秘では通常認めないよ。
サクラ
選択肢3の叩打痛はどうですか?
博士
叩打痛は打診で生じる痛みで、有名なのはCVA叩打痛、つまり肋骨脊柱角叩打痛で腎盂腎炎や尿路結石で陽性になる。便秘では典型的ではないんだ。
サクラ
打診音の種類を整理してもらえますか?
博士
清音(正常肺)、過共鳴音(気胸・肺気腫)、鼓音(胃泡・腸管ガス)、濁音(肝・脾・心・便)、絶対濁音(大腿・骨)の5種だ。
サクラ
打診の手順はどうしますか?
博士
右下腹部から時計回りに4領域あるいは9領域を系統的に打診する。肝濁音界の確認も重要で、右前腋窩線で第7肋間から肋骨弓下1〜2cmが正常だよ。
サクラ
腹膜炎の所見も教えてください。
博士
反跳痛つまりBlumberg徴候、筋性防御、打診痛の3つが典型的だ。これらは緊急手術適応の判断にもつながる重要所見なんだ。
サクラ
便秘と腸閉塞はどう区別するんですか?
博士
腸閉塞では金属音性腸蠕動音や嘔吐、排ガス排便停止が特徴で、画像で鏡面形成が見られる。便秘との鑑別には聴診・打診・画像所見の総合評価が必要だね。
サクラ
打診って奥が深いですね。
博士
フィジカルアセスメントの基本だから、実技と合わせて何度も練習しよう。
POINT
便秘患者では腸管内ガス貯留により鼓腸が生じ、打診で広範な鼓音を聴取する。正解は4の鼓腸。固い腫瘤と筋性防御は触診、叩打痛は打診で生じる痛みだが便秘では典型的に認めない。腹部診察は視診→聴診→打診→触診の順で系統的に行い、打診音の種類(清音・鼓音・濁音など)を鑑別することが重要。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:便秘を訴えている患者の打診のアセスメント項目で適切なのはどれか。
解説:正解は 4 です。打診(percussion)は身体表面を叩いて内部の空気・液体・固形物の分布を音で推定する身体診察法で、腹部では鼓音(ガス)と濁音(便・臓器・液体)を聞き分けます。便秘患者ではガス貯留により腹部が膨隆し、打診で広範な鼓音(鼓腸)を聴取します。腹部アセスメントは視診→聴診→打診→触診の順で行い(聴診を腸蠕動音への影響を避けるため触診前に実施)、打診所見から固形物と気体の分布を推定します。
選択肢考察
-
× 1. 固い腫瘤
腫瘤の硬さ・可動性・圧痛などは触診で評価する項目です。打診では腫瘤の存在による濁音の拡大は推定できても、硬さそのものは評価できません。
-
× 2. 筋性防御
筋性防御(muscular defense)は腹膜刺激徴候の一つで、腹膜炎や腹腔内出血で腹壁が反射的に緊張する現象。触診で評価する所見で、便秘では通常認めません。
-
× 3. 叩打痛
叩打痛は打診で生じる痛みで、CVA叩打痛(腎盂腎炎・尿路結石)や肝叩打痛(肝炎)などで陽性。便秘では典型的には認めず、腹膜炎などを疑う所見です。
-
○ 4. 鼓腸
鼓腸(meteorism)は腸管内ガス貯留による腹部膨満で、打診で広範な鼓音(太鼓のような高い響く音)を聴取します。便秘ではガスと便が混在し、ガス貯留部位が鼓音、便貯留部位が濁音となります。
打診音の種類は①清音(正常肺)、②過共鳴音(気胸・肺気腫)、③鼓音(胃泡・腸管ガス)、④濁音(肝・脾・心・充実臓器・便・腫瘤)、⑤絶対濁音(大腿・骨)の5種。腹部打診の順序は右下腹部から時計回りに全領域を打診し、臓器境界(肝濁音界:右前腋窩線で第7肋間〜肋骨弓下1〜2cm)も確認します。腹膜炎を疑う所見としては、反跳痛(Blumberg徴候)、筋性防御、打診痛などがあります。
打診で評価できる項目と、便秘患者で観察される特徴的所見(鼓腸)を結びつけられるかを問う問題です。
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