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妊娠初期のアンビバレントな感情を理解する

看護師国家試験 第105午後105(状況設定問題)

国試問題にチャレンジ

105午後105

状況設定

Aさん(28歳、女性、会社員)は、結婚後1年で夫と2人で暮らしている。仕事上の役割も増えている。次回月経予定日を2週過ぎても月経がみられないため、勤務先近くの産婦人科クリニックを受診した。月経周期は28日型で、最終月経は3月2日から4日間であった。診察の結果、妊娠と診断された。

Aさんは医師から妊娠していると説明を受けた。Aさんは看護師に「初めての妊娠でうれしい。でも、任されている大きなプロジェクトが続けられなくなるため悲しくて、妊娠しなければよかったと思います」と話す。 この時期のAさんの心理状態で最も適切なのはどれか。

  1. 1.錯乱状態である。
  2. 2.他罰的な感情がある。
  3. 3.マタニティブルーズである。
  4. 4.アンビバレント〈両価的〉な感情がある。

対話形式の解説

博士博士
博士じゃ。28歳のAさんは初めての妊娠を告げられ「うれしい。でもプロジェクトが続けられなくなるから悲しい。妊娠しなければよかった」と語っておる。この心理状態を問う問題じゃ。
サクラサクラ
喜びと悲しみが同時に出ていますね。矛盾した感情が共存している印象です。
博士博士
よい観察じゃ。心理学ではこれをアンビバレンス、両価性と呼ぶ。スイスの精神科医ブロイラーが提唱した概念じゃの。
サクラサクラ
妊娠でよく見られる反応なんですか?
博士博士
うむ。妊娠の受容過程では、母性看護学者ラビンの言う「受容期」にあたる妊娠初期に特に多い。子どもを授かった喜びと、仕事・夫婦関係・自分の体の変化への不安が同居するのは、病気ではなく正常な心の動きじゃ。
サクラサクラ
選択肢を見ていきます。1の錯乱状態は違いますよね。
博士博士
違うの。錯乱は意識混濁に幻覚や精神運動興奮が加わる意識障害じゃ。Aさんは意識清明で論理的に自分の気持ちを説明できておる。
サクラサクラ
2の他罰的感情は?
博士博士
他罰は失敗や不幸を他人のせいにする態度じゃが、Aさんは誰かを責めとるわけではない。自分の中で葛藤しておるから該当せん。
サクラサクラ
3のマタニティブルーズも違うと思います。時期が産後ですよね。
博士博士
その通り。マタニティブルーズは産後3〜10日頃、エストロゲンとプロゲステロンが急激に低下する影響で涙もろくなったり不眠になったりする一過性の情緒不安定じゃ。Aさんは妊娠6週で産後ではないから当てはまらん。
サクラサクラ
4のアンビバレントが正解ですね。
博士博士
そうじゃ。ちなみに産後うつ病はマタニティブルーズと区別が必要で、産後2週間以上続く抑うつや希死念慮があれば精神科介入が要る。
サクラサクラ
看護師としてはAさんにどう関わればいいでしょうか。
博士博士
否定せず共感的に傾聴することじゃ。「妊娠なのに悲しいなんて言ってはいけない」と感じる妊婦も多い。両価的な感情は正常で誰もが通る道だと伝え、安心して気持ちを語れる場を提供するのが第一歩じゃ。
サクラサクラ
仕事との両立についての具体策も伝えたほうがいいですか?
博士博士
タイミングを見てな。労働基準法の母性健康管理措置、産前産後休業、育児休業、職場への妊娠報告の時期や方法など、情報提供は不安軽減に役立つ。夫との話し合いを支えるのも大切じゃの。
サクラサクラ
アンビバレンス自体はどの時期までみられますか?
博士博士
妊娠中期に胎動を感じ始めると胎児への愛着が深まり、次第に受容が進む。中期は適応期、後期は準備期とラビンは分類しておる。妊娠後期に両価性が強く残って母親役割を拒絶する場合は、虐待リスクも視野に追加支援が要る。
サクラサクラ
アンビバレントを「病的」と誤解せず「正常な反応」として捉えることがポイントですね。
博士博士
うむ。母性看護の基本は感情の受容と正常化じゃ。Aさんの揺れも、母親になる過程で自然な一歩じゃと理解することでよい関わりができる。

POINT

妊娠初期における正常な心理反応としてのアンビバレンス(両価性)を理解し、他の精神症状用語と鑑別できるかを問う設問です。

解答・解説

正解は4です

問題文:Aさんは医師から妊娠していると説明を受けた。Aさんは看護師に「初めての妊娠でうれしい。でも、任されている大きなプロジェクトが続けられなくなるため悲しくて、妊娠しなければよかったと思います」と話す。 この時期のAさんの心理状態で最も適切なのはどれか。

解説:正解は 4 です。アンビバレント(両価的)とは、同じ対象に対して喜びと悲しみ、愛と憎しみなど相反する感情が同時に存在する心理状態を指します。妊娠初期、特に予期せぬ妊娠や仕事との両立に不安を持つ女性には、妊娠を喜ぶ気持ちと受け入れがたい気持ちの両方が共存することが多く、ラビンの母性役割獲得理論でも受容期の正常な心理反応とされています。

選択肢考察

  1. ×1.  錯乱状態である。

    錯乱状態は意識混濁や幻覚、激しい精神運動興奮を伴う意識障害で、Aさんは意識清明で論理的に自分の気持ちを語れており該当しません。

  2. ×2.  他罰的な感情がある。

    他罰的感情は失敗や不幸の原因を他人のせいにする態度ですが、Aさんは自分の内面で葛藤しており他者を責める発言はしていません。

  3. ×3.  マタニティブルーズである。

    マタニティブルーズは産後3〜10日ごろに女性ホルモンの急激な低下で生じる一過性の情緒不安定で、妊娠初期のAさんには時期的に当てはまりません。

  4. 4.  アンビバレント〈両価的〉な感情がある。

    「うれしい」と「妊娠しなければよかった」という相反する感情が同時に表出されており、まさにアンビバレンスの典型です。妊娠初期の受容過程で多く見られる正常な心理反応です。

妊娠初期の心理課題は「妊娠の受容」で、ラビンは妊娠前期を「受容期」、中期を「適応期」、後期を「準備期」と位置付けました。アンビバレントな感情は病的ではなく、妊婦が母親役割へ移行する過程で必然的に現れる正常反応です。看護では否定や励ましではなく、感情を受け止め共感的に傾聴することで受容を支えます。仕事との両立への不安には、産休・育休制度や母性健康管理措置など社会資源の情報提供も有効です。

妊娠初期における正常な心理反応としてのアンビバレンス(両価性)を理解し、他の精神症状用語と鑑別できるかを問う設問です。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。