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災害救護所の初動:なぜ「トリアージ別待機区域」が最優先なのか

看護師国家試験 第115午前119(状況設定問題)

国試問題にチャレンジ

115午前119

状況設定

午前9時、震度6強の大地震が発生した。発災直後、A病院では傷病者への対応として救急病棟に8床確保した。その応援のために各部署から看護師3名、医師2名、臨床工学技士1名、臨床検査技師1名、理学療法士1名が救急病棟に集まった。救急病棟のリーダー看護師は他部署から集まったスタッフとカンファレンスを行った。

発災1時間後、町内の避難所に救護所が開設され、A病院から応援の看護師が派遣された。救護所には簡易ベッド、処置台、医療資材、ホワイトボードが設置されている。数十分後には救護所に多数の傷病者が来ることを想定し準備を行った。 救護所の看護師が行う準備で優先されるのはどれか。

  1. 1.医療資材の使用期限確認
  2. 2.24時間体制の看護師の確保
  3. 3.医療処置前に契約する同意書の作成
  4. 4.医療機関別の救急受け入れ先リストの確認
  5. 5.トリアージ別に傷病者が待機する区域の確保

対話形式の解説

博士博士
今日は災害看護の出題じゃ。震度6強の大地震が発生し、避難所に救護所が開設された場面を考えるぞ。これから多数の傷病者がやってくる、そのとき救護所の看護師がまずすべきことは何かのう?
サクラサクラ
えっと…医療資材の使用期限確認は大事ですよね。期限切れの物品で処置したらまずいですし。
博士博士
なるほど。確かに平時なら大切な業務じゃ。じゃが、数十分後に何十人もの傷病者が押し寄せる場面で、棚の前で一本ずつ期限を確認しておるヒマはあるかのう?
サクラサクラ
あっ…そうですね。それより先にやることがありそうです。じゃあ24時間体制の看護師確保は?
博士博士
それは現場の一看護師が即座にできることではない。災害対策本部やDMAT、派遣元病院が調整する業務じゃな。同意書作成も、災害時は緊急避難的に黙示の同意が認められておるから、書類作りに時間を使うのは本末転倒じゃ。
サクラサクラ
残るのは搬送先リストの確認と、トリアージ別待機区域の確保ですね。どちらも大事そうですが…
博士博士
鋭いところまで来たのう。ここで考えてほしい。トリアージで赤・黄・緑・黒に分類しても、置く場所が決まっていなければどうなるかな?
サクラサクラ
あ、重症者と軽症者が同じ場所にごちゃ混ぜになって、医療者がどこに行けばいいかわからなくなりますね。
博士博士
その通り!動線が交錯すれば赤の傷病者の処置が遅れ、緑の人々の不安も増大する。だからこそ、まず「赤エリア」「黄エリア」「緑エリア」と物理的に区域を分けて、トリアージタッグの色のとおりに誘導できる状態を作っておくのが初動の核なのじゃ。
サクラサクラ
なるほど…正解は「トリアージ別に傷病者が待機する区域の確保」ですね。ところで、トリアージってどうやって判定するんですか?
博士博士
代表的なのはSTART法じゃ。まず歩行可否、次に呼吸の有無と回数、循環(橈骨動脈の触知やCRT)、最後に意識レベルを30秒以内に確認していく。赤は最優先治療、黄は待機的治療、緑は軽症で歩行可能、黒は死亡または救命困難、と4色に分類するのじゃ。
サクラサクラ
30秒以内ってすごく速いですね…!迷う時間はないんですね。
博士博士
そう、災害時は「最大多数の最大幸福」が原則。一人に長時間かけるより、助かる命を一人でも多く救うための判断じゃ。それから設問文にホワイトボードが出てきておったろう?あれも重要な装備じゃぞ。
サクラサクラ
あ、本当だ。どう使うんですか?
博士博士
傷病者数、トリアージの色別人数、搬送状況、スタッフの配置などを可視化する情報共有ツールじゃ。災害医療ではCSCATTTという7つの原則があってのう、指揮・安全・情報伝達・評価・トリアージ・治療・搬送、この順で体制を整えるのが鉄則じゃ。ホワイトボードは「情報伝達」と「評価」を支える要となる。
サクラサクラ
CSCATTT…語呂で覚えやすそうですね。災害は普段の救急医療とまるで考え方が違うんですね。
博士博士
うむ、平時は「一人の患者に最善を尽くす」が原則じゃが、災害時は「限られた資源で最大多数を救う」へ価値観が切り替わる。看護師はこの転換を瞬時にできることが求められるのじゃ。
サクラサクラ
今日のポイントは「初動はまず動線と区域、それからトリアージ運用」ですね。よくわかりました!

POINT

災害発生直後の救護所開設場面において、多数傷病者の受け入れに備えて看護師が真っ先に整えるべきオペレーション要素は何かを問う問題。重症度別の動線と待機区域を整備するという「現場オペレーションの確立」が初動の核であることを理解する。

解答・解説

正解は5です

問題文:発災1時間後、町内の避難所に救護所が開設され、A病院から応援の看護師が派遣された。救護所には簡易ベッド、処置台、医療資材、ホワイトボードが設置されている。数十分後には救護所に多数の傷病者が来ることを想定し準備を行った。 救護所の看護師が行う準備で優先されるのはどれか。

解説:正解は 5 です。災害発生直後の救護所では、これから多数の傷病者が同時に押し寄せることが予想される。このような状況で最優先となるのは、限られた人員・資源で最大多数の救命を実現するためのオペレーション基盤、すなわち「トリアージ別の待機区域」の確保である。傷病者の重症度に応じて赤(最優先治療:Ⅰ)、黄(待機的治療:Ⅱ)、緑(軽症:Ⅲ)、黒(救命困難・死亡:0)の4区分に色分けされたエリアをあらかじめ設定しておくことで、到着順ではなく緊急度・重症度の順に治療を進めることが可能となる。区域分けが整っていなければ動線が交錯し、重症者が後回しになる、軽症者の不安が増大する、医療者の判断が遅れるといった二次被害につながりかねず、初動段階で最も優先される準備といえる。

選択肢考察

  1. ×1.  医療資材の使用期限確認

    平時の備蓄管理としては重要な業務だが、傷病者が到着する直前の準備としては優先度が低い。期限切れが疑われる物品はその場で確認・除外する運用にとどめ、まずは受け入れ体制(スペース・動線)の整備を優先する。

  2. ×2.  24時間体制の看護師の確保

    中長期的な救護所運営には不可欠だが、人員調整は派遣元の病院や災害対策本部、DMAT等が担う業務である。現場の看護師が開設直後の数十分のうちにまず取り組むべきは、目の前に到着する多数傷病者への即応体制の確立である。

  3. ×3.  医療処置前に契約する同意書の作成

    災害時の救命処置は、緊急避難的に黙示の同意のもとに行うことが認められており、平時のような書面同意は前提とされない。書類作成に時間を割くことは初動の遅延を招き、優先順位は低い。

  4. ×4.  医療機関別の救急受け入れ先リストの確認

    搬送先確保は重要な業務だが、災害時は通常の救急医療体制と異なり、地域災害医療コーディネーターやDMATを介した広域搬送調整が中心となる。救護所内のオペレーションを成り立たせる区域確保のほうが先である。

  5. 5.  トリアージ別に傷病者が待機する区域の確保

    多数傷病者の発生が予測される状況では、重症度別に区域を色分けして配置し、動線を整理しておくことが救護所運営の土台となる。区域分けが先に整っていれば、トリアージタッグの色に応じて即座に該当エリアへ誘導でき、限られた医療資源を効率よく配分できる。

災害時のトリアージはSTART法(Simple Triage And Rapid Treatment)が代表的で、歩行可否→呼吸→循環(橈骨動脈触知やCRT)→意識の順に約30秒以内で重症度を判定する。区域の色分けは赤(Ⅰ:最優先)、黄(Ⅱ:待機的)、緑(Ⅲ:軽症・歩行可能)、黒(0:死亡または救命困難)の4色で、それぞれの待機・治療エリアを物理的に分けることで医療者の判断と動線がシンプルになる。設問にあるホワイトボードは、傷病者の人数・トリアージ区分・搬送状況・スタッフ配置などを可視化する重要なツールであり、災害医療における情報共有の基盤として活用される。CSCATTT(指揮Command、安全Safety、情報伝達Communication、評価Assessment、トリアージTriage、治療Treatment、搬送Transport)という災害医療の7原則も併せて押さえておきたい。

災害発生直後の救護所開設場面において、多数傷病者の受け入れに備えて看護師が真っ先に整えるべきオペレーション要素は何かを問う問題。重症度別の動線と待機区域を整備するという「現場オペレーションの確立」が初動の核であることを理解する。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。