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ギプスの中で起きている危険信号〜小児上腕骨骨折とVolkmann拘縮

看護師国家試験 第115午後106(状況設定問題)

国試問題にチャレンジ

115午後106

状況設定

Aちゃん(7歳、女児)は両親と弟(2歳)の4人で暮らしている。下校中に転倒して右手を地面についていた。夕食時に母親がAちゃんの異変を感じ、Aちゃんに尋ねたところ「転んで肘が痛い」と話したため救急外来を受診した。その結果、利き腕である右側の上腕骨の骨折が判明したため、入院して直ちに全身麻酔下で内固定術を受け、ギプス固定された。

術後に注意すべきAちゃんへの観察はどれか。

  1. 1.ばち指
  2. 2.クリックサイン
  3. 3.Gowers〈ガワーズ〉徴候
  4. 4.Volkmann〈フォルクマン〉拘縮

対話形式の解説

博士博士
今日はAちゃんという7歳の女の子の事例じゃ。下校中に転んで右肘を痛め、利き腕の上腕骨を骨折してしまった。全身麻酔で内固定術を受けて、その後ギプス固定をされた状態じゃよ。
サクラサクラ
7歳で利き腕の骨折…つらいですね。手術が終わって安心、というわけにはいかないんですか?
博士博士
そこが今日のテーマじゃ。術後に注意すべき観察項目として、ばち指、クリックサイン、Gowers徴候、Volkmann拘縮の4つから選ぶ問題なんじゃが、どれだと思う?
サクラサクラ
ばち指は呼吸器疾患で習った気がします…クリックサインは赤ちゃんの股関節脱臼ですよね。Gowers徴候は筋ジスだったような…。残るとVolkmann拘縮ですか?
博士博士
その通り、正解は4のVolkmann〈フォルクマン〉拘縮じゃ。小児の上腕骨顆上骨折は、肘の周囲を走る上腕動脈を圧迫しやすくてのう、さらにギプスで外側から締めつけられると前腕の筋区画内圧が上がって血流が止まってしまう。これがコンパートメント症候群で、放置すると筋と神経が壊死して屈曲拘縮を残す。これがVolkmann拘縮じゃ。
サクラサクラ
怖いですね…前兆って分かるんですか?
博士博士
覚え方は「5P」じゃ。Pain(疼痛増強)、Pallor(蒼白)、Pulselessness(拍動消失)、Paresthesia(しびれ)、Paralysis(麻痺)。中でも一番早く出るのが、安静時の強い痛みと、指を他動的に伸ばしたときの激痛じゃよ。
サクラサクラ
ということは、ギプスをした後も指の色や温度、しびれ、動かせるかを何度もチェックする必要があるんですね。
博士博士
その通り。爪を押して色が戻る時間、いわゆる毛細血管再充満時間も大切な指標じゃ。子どもは「痛い」「変な感じ」と上手く言葉にできんから、家族や看護師が客観的に観察してやる必要がある。
サクラサクラ
他の選択肢も整理させてください。ばち指は慢性的な低酸素で出る慢性所見、クリックサインは乳児の股関節脱臼、Gowers徴候は筋ジストロフィーの登攀性起立…全部、術後急性期の観察項目じゃないですね。
博士博士
完璧じゃ。ちなみにコンパートメント症候群は発症から6〜8時間以内に減張切開ができれば後遺症を防げる可能性が高い。だからこそ「早期発見」がキーワードなんじゃよ。
サクラサクラ
ギプスをしてあるから安心、ではなく、ギプスの中で何が起きているかを観察し続けることが看護師の役割なんですね。
博士博士
その視点が大事じゃ。小児整形外科の術後ケアでは、骨を治すこと以上に、合併症を見逃さず機能を守ることが重要になる。Volkmann拘縮は一度起きると元には戻らんからの。

POINT

ギプス固定後の循環・神経障害の観察「5P(Pain・Pallor・Pulselessness・Paresthesia・Paralysis)」と、放置すればVolkmann拘縮に至るというストーリーで結びつけて覚えるのが効率的です。小児は痛みの訴えが曖昧なため、客観的指標である末梢の色・温度・他動伸展時痛の確認を欠かさないことが鍵となります。

解答・解説

正解は4です

問題文:術後に注意すべきAちゃんへの観察はどれか。

解説:正解は 4 です。小児の上腕骨骨折(特に顆上骨折)後にギプス固定を行った場合、前腕の腫脹や外固定による筋区画内圧の上昇から血流障害を起こし、虚血性拘縮であるVolkmann〈フォルクマン〉拘縮を生じる危険があります。術後早期はこの致命的な合併症の前兆を見逃さないことが最優先の観察ポイントです。

選択肢考察

  1. ×1.  ばち指

    ばち指(時計皿爪、太鼓ばち指)は、慢性的な低酸素血症が持続することで生じる指先の変形で、間質性肺疾患、気管支拡張症、肺癌、チアノーゼ性心疾患、炎症性腸疾患などで観察されます。出現までに数か月から数年を要する慢性所見であり、上腕骨骨折術後早期に観察すべき項目ではありません。

  2. ×2.  クリックサイン

    クリックサイン(Ortolani徴候・Barlow徴候)は、乳児の発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)のスクリーニング所見であり、股関節を外転させた際に「コクッ」と整復される感覚で評価します。7歳児の上腕骨骨折術後とは無関係であり、観察項目として誤りです。

  3. ×3.  Gowers〈ガワーズ〉徴候

    Gowers〈ガワーズ〉徴候は、Duchenne型筋ジストロフィーをはじめとする近位筋優位の筋力低下で認められる所見で、床から立ち上がる際に膝・大腿に手をついて体を「登る」ように起立する動作(登攀性起立)を指します。骨折術後の急性期合併症の観察項目ではありません。

  4. 4.  Volkmann〈フォルクマン〉拘縮

    Volkmann〈フォルクマン〉拘縮は、小児の上腕骨顆上骨折に代表される肘部外傷後に、上腕動脈の圧迫や前腕屈筋区画のコンパートメント症候群によって虚血が起こり、筋・神経が壊死・線維化して屈曲拘縮を残す重篤な合併症です。前兆としてはPainの増強、Pallor(蒼白)、Pulselessness(橈骨動脈拍動消失)、Paresthesia(しびれ)、Paralysis(運動麻痺)の「5P」、特に手指他動伸展時の強い疼痛が重要で、ギプス固定下では循環・知覚・運動を継続的に観察し、異常があれば直ちにギプスを開放する必要があります。

上腕骨顆上骨折は学童期に多い骨折で、肘関節の過伸展機転で生じやすく、骨片による上腕動脈・正中神経損傷を合併するリスクが高い外傷です。ギプス固定後は、指先の色(蒼白・チアノーゼ)、皮膚温(冷感)、爪床の毛細血管再充満時間(CRT)、橈骨動脈の触知、自動運動の可否、感覚異常(しびれ)、そして安静時に増強する疼痛や他動伸展時痛を、対側と比較しながら定期的に観察します。コンパートメント症候群は発症から6〜8時間以内に減張切開を行えば後遺症を防げる可能性があるため、早期発見が転帰を左右します。

ギプス固定後の循環・神経障害の観察「5P(Pain・Pallor・Pulselessness・Paresthesia・Paralysis)」と、放置すればVolkmann拘縮に至るというストーリーで結びつけて覚えるのが効率的です。小児は痛みの訴えが曖昧なため、客観的指標である末梢の色・温度・他動伸展時痛の確認を欠かさないことが鍵となります。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。