『時々むせる』を見逃さない――重症児ケアは“呼吸と嚥下”が最優先
看護師国家試験 第115回 午前 第106問(状況設定問題)
国試問題にチャレンジ
状況設定
Aちゃん(1歳9か月)は両親と保育所に通う姉のBちゃん(3歳)と4人で暮らしている。Aちゃんは重症の仮死で出生し、脳性麻痺と診断されている。食事、排泄、更衣は全介助である。食事はきざみ食を摂取しており、浣腸によって2日に1回排便がある。Aちゃんは全身の筋緊張が強く、肘関節と手関節は屈曲し、両下肢が交差し伸展する姿勢が多い。声かけやタッチングで笑顔がみられるが、発語はない。 Aちゃんは月2回の外来受診をしており、受診の際に母親が看護師に「Aは食欲がありますが、時々むせてしまいます。日中は機嫌よく過ごすことが多いのですが、手足を突っ張らせて背を反り返ることがあり、夜眠らないことが時々あります」と話している。
Aちゃんへの支援で優先度が高いのはどれか。
- 1.感染対策の見直し
- 2.食事の形態の変更
- 3.排便のコントロール
- 4.睡眠パターンのコントロール
対話形式の解説
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士POINT
重症心身障害児のケアでは『呼吸・摂食』の安全確保が常に最優先で、『時々むせる』という訴えは誤嚥のサインとして食形態・姿勢・嚥下評価の見直しに直結させる。
解答・解説
正解は2です
問題文:Aちゃんへの支援で優先度が高いのはどれか。
解説:正解は 2 の「食事の形態の変更」です。Aちゃんは脳性麻痺による全身の強い筋緊張があり、後弓反張様の姿勢をとりやすく、加えてきざみ食を摂取中に「時々むせる」とのエピソードが母親から語られています。むせは誤嚥のサインであり、放置すれば誤嚥性肺炎・窒息という生命に直結する事態を招きかねません。重症心身障害児では呼吸・摂食・嚥下のトラブルが死因となりうるため、生活ケアの優先順位を組み立てる際には『生命の安全(呼吸・嚥下)』をまず確保することが鉄則です。きざみ食はかえって口腔内でまとまりにくく、ばらけて咽頭に落ち込みやすいため誤嚥リスクが高い形態であり、ペースト状やゼリー状、とろみ付与など嚥下機能に合わせた形態への見直しと、姿勢調整・嚥下機能評価につなげることが最優先の支援となります。
選択肢考察
- ×1. 感染対策の見直し
重症心身障害児では呼吸器感染症の予防は確かに重要なテーマですが、現時点で母親から発熱・喀痰増加・気道感染を示唆する訴えはありません。これに対し『時々むせる』という誤嚥を示す具体的な徴候は語られており、緊急性・優先度では誤嚥への対応が上回ります。感染対策は中長期的に並行して整える課題であり、最優先支援ではありません。
- ○2. 食事の形態の変更
むせは咽頭への食塊侵入を示すサインで、誤嚥性肺炎や窒息といった生命予後に直結するリスクを伴います。Aちゃんは筋緊張亢進で姿勢保持も難しく、きざみ食はばらけて咽頭に落ち込みやすいため誤嚥を起こしやすい形態です。摂食嚥下評価のうえでペースト食やとろみ付与など嚥下機能に合った形態へ調整し、頸部前屈位の保持など摂食姿勢の工夫を行うことが最優先となります。
- ×3. 排便のコントロール
Aちゃんは浣腸という介助を要するものの、2日に1回の排便がコントロールされており、現時点で腹部膨満や嘔吐などの便秘合併症の訴えもありません。重症児で便秘は嘔吐・誤嚥の遠因にもなり得るためケアの対象ではありますが、目下の生命リスクは誤嚥のほうが大きく、優先度ではこちらが先です。
- ×4. 睡眠パターンのコントロール
夜眠れないことは本人のQOLや家族の介護負担にとって重要な課題で、筋緊張・反り返りとも関連しうるため評価・対応は必要です。しかし睡眠の問題は直ちに生命を脅かすものではなく、誤嚥リスクへの対応に比べると優先度は下がります。安全確保のあとに筋緊張緩和や日中活動の調整とあわせて取り組むべき課題です。
重症心身障害児・脳性麻痺児の摂食嚥下では、口腔期の咀嚼・食塊形成の障害、咽頭期のタイミングずれ、不顕性誤嚥が起こりやすく、きざみ食はばらつきが大きく逆に誤嚥リスクが高いことが知られています。安全な摂食には『姿勢(リクライニング+頸部やや前屈・体幹安定)』『食形態(ペースト・ゼリー・とろみ)』『一口量と介助ペース』『摂食前後の覚醒度・呼吸状態の確認』が要点です。後弓反張や強い伸展パターンが出ているときの無理な摂食は避け、抗重力姿勢でリラックスできる体位を整えてから提供します。むせや湿性嗄声、食後の発熱・SpO2低下があれば誤嚥性肺炎を疑い受診へつなげます。
重症心身障害児のケアでは『呼吸・摂食』の安全確保が常に最優先で、『時々むせる』という訴えは誤嚥のサインとして食形態・姿勢・嚥下評価の見直しに直結させる。
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