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ギプスでも自分で食べたい!学童期Aちゃんの『迷惑をかけたくない』に応える看護

看護師国家試験 第115午後107(状況設定問題)

国試問題にチャレンジ

115午後107

状況設定

Aちゃん(7歳、女児)は両親と弟(2歳)の4人で暮らしている。下校中に転倒して右手を地面についていた。夕食時に母親がAちゃんの異変を感じ、Aちゃんに尋ねたところ「転んで肘が痛い」と話したため救急外来を受診した。その結果、利き腕である右側の上腕骨の骨折が判明したため、入院して直ちに全身麻酔下で内固定術を受け、ギプス固定された。

術後1日。Aちゃんは看護師に「昨日の夜は、お母さんに食べさせてもらった。私には弟がいて、お世話が大変なの。私はお母さんに迷惑をかけたくない」と話した。 Aちゃんへの看護師の声かけで最も適切なのはどれか。

  1. 1.「左手で食べる練習をしよう」
  2. 2.「お母さんのためなんだから、頑張ろう」
  3. 3.「看護師さんが食べさせてあげるね」
  4. 4.「お母さんのことは気にしなくていいよ」

対話形式の解説

博士博士
今回は7歳のAちゃんが、利き手の右上腕骨骨折でギプス固定された術後1日目の場面じゃ。Aちゃんが『お母さんに迷惑をかけたくない』と話したとき、看護師としてどう声をかけるべきか、一緒に考えてみよう。
サクラサクラ
博士、子どもがそんなふうに気を遣っていると、つい『気にしなくていいよ』って言いたくなっちゃいます。
博士博士
優しさとしては自然な反応じゃな。でも学童期の子どもの心理発達を踏まえると、それだけでは少し物足りないんじゃ。エリクソンによれば、学童期は『勤勉性 対 劣等感』の時期で、自分でできた経験が自己肯定感につながるんじゃよ。
サクラサクラ
なるほど、ただ慰めるよりも『自分でできた』を支える関わりが大事なんですね。
博士博士
そのとおり。では選択肢を見ていこう。正解は1の『左手で食べる練習をしよう』じゃ。利き手が使えなくても、非利き手で食事をとる方法を一緒に練習することは、Aちゃんの『迷惑をかけたくない』という思いに具体的に応える支援になるんじゃ。
サクラサクラ
ただ我慢させるのではなく、できる方法を一緒に探すんですね。
博士博士
そうじゃ。2の『お母さんのためなんだから、頑張ろう』はどうかな?
サクラサクラ
『お母さんのため』って言われると、子どもには重すぎる気がします…。頑張れなかったら自分を責めちゃいそう。
博士博士
よく気付いたな。子どもに過度な責任感を負わせる声かけは避けるべきじゃ。3の『看護師さんが食べさせてあげるね』は一見親切に見えるが、本来できる動作まで全介助にすることはAちゃんの自立の機会を奪ってしまう。
サクラサクラ
『やってあげる』が必ずしも優しさではないんですね。
博士博士
そのとおり。そして4の『お母さんのことは気にしなくていいよ』は、Aちゃんが大切にしている『母を思いやる気持ち』を否定する形になる。感情はまず受け止めることが原則じゃ。
サクラサクラ
気持ちを受け止めたうえで、具体的な行動を提案するのが大事なんですね。家族にも『全部手伝わず、見守る』関わり方を伝えると良さそうです。
博士博士
すばらしいまとめじゃ。自助具や滑り止めマット、扱いやすい食具を活用すれば成功体験も得やすい。学童期の看護では『できないことを補う』だけでなく『できる方法を一緒に見つける』姿勢が鍵になるんじゃよ。

POINT

学童期の子どもには、できないことを代行する関わりよりも、「どうすれば自分でできるか」を一緒に考える関わりが基本です。子どもの言葉の背景にある気持ち(迷惑をかけたくない・自分でやりたい)を受け止めたうえで、自立を支える具体的な提案ができるかが問われます。

解答・解説

正解は1です

問題文:術後1日。Aちゃんは看護師に「昨日の夜は、お母さんに食べさせてもらった。私には弟がいて、お世話が大変なの。私はお母さんに迷惑をかけたくない」と話した。 Aちゃんへの看護師の声かけで最も適切なのはどれか。

解説:正解は 1 の「左手で食べる練習をしよう」です。学童期にあるAちゃんは「自分でできた」という体験を通して自己効力感や有能感を育てていく時期にあります。利き手である右手がギプス固定されている状況でも、非利き手である左手を使う方法を一緒に提案することで、母親に頼り切らず自分の力で食事をとるという達成感を支えることができます。Aちゃんが訴えた「迷惑をかけたくない」という気持ちを尊重しつつ、子どもの自立を後押しする最も適切な声かけです。

選択肢考察

  1. 1.  「左手で食べる練習をしよう」

    学童期は、エリクソンの発達課題でいう「勤勉性 対 劣等感」の時期にあたり、自分でできることが増える経験が自己肯定感の基盤となります。利き手が使えなくても、非利き手で食事をとる練習を一緒に行うことは、セルフケア能力の維持と達成感の獲得につながり、Aちゃんの「迷惑をかけたくない」という思いに具体的に応える支援になります。

  2. ×2.  「お母さんのためなんだから、頑張ろう」

    「お母さんのため」と理由づけて努力を促す声かけは、子どもに過剰な責任感や負担を背負わせてしまう可能性があります。また、Aちゃん自身の不安や葛藤を受け止めずに頑張りだけを要求する形となり、心理的支援としては不十分です。

  3. ×3.  「看護師さんが食べさせてあげるね」

    一見やさしい対応に見えますが、本来Aちゃん自身が工夫すればできる動作まで全介助にしてしまうことは、自立の機会を奪うことになります。学童期では、できることを代行するのではなく、できる方法をともに考えていく姿勢が望まれます。

  4. ×4.  「お母さんのことは気にしなくていいよ」

    Aちゃんの気持ちを軽くしてあげたい意図はわかりますが、本人が大切に抱いている「母を思いやる気持ち」を否定する形になりかねません。感情を受け止めたうえで、自立につながる具体的な方法を提示する関わりが必要です。

学童期の小児看護では、入院や治療によって低下しがちなセルフケア能力をどう保つかが大切な視点となります。利き手の損傷後は、食事・更衣・整容・書字などの日常生活動作を非利き手で行えるよう段階的に練習を進めます。最初はスプーンやフォークなど扱いやすい食具を選び、滑り止めマットや縁の高い皿などの自助具を活用すると成功体験を得やすくなります。また、家族にも「全部手伝う」のではなく「見守りながら必要な部分だけ介助する」関わり方を伝えることで、子どもの自尊心を守りつつ安全な生活を支えることができます。

学童期の子どもには、できないことを代行する関わりよりも、「どうすれば自分でできるか」を一緒に考える関わりが基本です。子どもの言葉の背景にある気持ち(迷惑をかけたくない・自分でやりたい)を受け止めたうえで、自立を支える具体的な提案ができるかが問われます。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。