StudyNurse

怖いって言える子に、未来の安心を届ける魔法のプレパレーション

看護師国家試験 第115午後108(状況設定問題)

国試問題にチャレンジ

115午後108

状況設定

Aちゃん(7歳、女児)は両親と弟(2歳)の4人で暮らしている。下校中に転倒して右手を地面についていた。夕食時に母親がAちゃんの異変を感じ、Aちゃんに尋ねたところ「転んで肘が痛い」と話したため救急外来を受診した。その結果、利き腕である右側の上腕骨の骨折が判明したため、入院して直ちに全身麻酔下で内固定術を受け、ギプス固定された。

手術から2か月、Aちゃんは母親と共に抜釘術のため再入院した。母親は「私は、前回の手術は急なことだったのでよく覚えていないです。Aもよく覚えていないみたいで『手術が怖い』と言っています」と話した。 母親への看護師の返答で最も適切なのはどれか。

  1. 1.「Aちゃんは、前回、頑張れたから大丈夫ですよ」
  2. 2.「お母さんに手術前のオリエンテーションをしますね」
  3. 3.「お母さんから、手術が必要であることを説明してください」
  4. 4.「手術に対してポジティブに取り組めるよう、Aちゃんに説明しますね」

対話形式の解説

博士博士
今日はね、7歳のAちゃんが抜釘術のために再入院してくる場面じゃよ。前回は緊急手術であっという間に終わってしまったから、今回「手術が怖い」と震えとるんじゃ。
サクラサクラ
2か月前のことをAちゃんはちゃんと覚えていて、それで余計に怖いんですね。お母さんも「私もよく覚えていない」って戸惑っているし……。
博士博士
そうじゃな。この場面で看護師がどう返答すべきか、4つの選択肢から選ぶ問題じゃよ。学童期の子の心理を踏まえて考えてごらん。
サクラサクラ
えーっと、ただ「大丈夫」って言うのは違いますよね。Aちゃんの「怖い」って気持ちを軽く扱っちゃう感じがします。
博士博士
鋭いの!正解は4番、「手術に対してポジティブに取り組めるよう、Aちゃんに説明しますね」じゃ。これがプレパレーションの考え方なんじゃよ。
サクラサクラ
プレパレーション……授業で聞いたことがあります。子どもに事前に説明することですよね?
博士博士
その通り。ただ説明するだけではなく、絵本や写真、人形、実際のマスクなどを使って、「いつ・どこで・何が起こるか」を発達段階に合わせて伝えるんじゃ。これで「未知の恐怖」が「予測できる体験」に変わる。
サクラサクラ
なるほど!1番の「前回頑張れたから大丈夫」は、Aちゃんの今の怖さを受け止めていないからダメなんですね。
博士博士
そうじゃ。2番の「お母さんにオリエンテーション」も、必要ではあるけれど、今この瞬間に支援すべきはAちゃん本人じゃ。母親への説明だけでは子どもの不安は減らんからの。
サクラサクラ
3番の「お母さんから説明してください」も、医療者が責任を持つべきところを家族に押し付けてしまっていますね。お母さん自身、前回のことを覚えていないって言っていますし。
博士博士
よく見ておるな。説明は専門知識を持つ医療者が、子どもの理解力に合わせて行うのが原則じゃ。家族には別途、家族の不安に応じた支援を行うんじゃよ。
サクラサクラ
プレパレーションって、子どもを「協力者」として尊重する技術なんですね。
博士博士
その視点が大事じゃ。プレパレーションには3段階あっての、(1)事前の説明、(2)処置中のディストラクション(気をそらす遊び)、(3)終了後のポストプレパレーション(頑張りを認め、体験を整理する)まで含まれるんじゃ。
サクラサクラ
終わった後のケアまであるんですね。それがあれば、次の医療体験も怖くなくなりそうです。
博士博士
まさにその通り。トラウマ化を防ぎ、医療に対する信頼を育てるんじゃよ。今回のAちゃんは、前回の緊急手術で心の準備ができなかったからこそ、今回は丁寧なプレパレーションで「乗り越えられた」体験に書き換えてあげたいの。
サクラサクラ
Aちゃんの「怖い」という気持ちを否定せず、その上で安心の材料を一緒に積み上げていく感じですね。
博士博士
完璧な理解じゃ!プレパレーションは魔法ではなく、看護師の丁寧な準備と関わりが生み出す科学的なケアなんじゃよ。

POINT

学童期の手術前ケアでは、子ども本人を主役にしたプレパレーションが不安軽減と治療への主体的参加の鍵になります。保護者だけに説明を委ねたり、本人の恐怖を「大丈夫」と封じ込めたりせず、医療者が発達段階に合わせて見通しを伝え、感情表出を受け止める姿勢が問われます。

解答・解説

正解は4です

問題文:手術から2か月、Aちゃんは母親と共に抜釘術のため再入院した。母親は「私は、前回の手術は急なことだったのでよく覚えていないです。Aもよく覚えていないみたいで『手術が怖い』と言っています」と話した。 母親への看護師の返答で最も適切なのはどれか。

解説:正解は 4 です。学童期の子どもにとって手術は「何をされるかわからない」未知の体験であり、強い恐怖の源になります。前回は緊急手術で十分な心理的準備ができなかったAちゃんが「怖い」と訴えている今、看護師が子ども自身に対して発達段階に応じた説明(プレパレーション)を行い、見通しを持たせて主体的に手術に向き合えるよう支援することが、最も適切な対応です。

選択肢考察

  1. ×1.  「Aちゃんは、前回、頑張れたから大丈夫ですよ」

    過去に頑張れた経験を励ましの材料にすること自体は否定されませんが、この返答ではAちゃんが今まさに感じている「怖い」という感情や、母親の不安をしっかり受け止めていません。安易に「大丈夫」と保証する声かけは、かえって本人や家族の感情表出を妨げ、必要な心理的ケアの機会を逃してしまう可能性があります。

  2. ×2.  「お母さんに手術前のオリエンテーションをしますね」

    保護者へのオリエンテーション自体は必要なケアですが、この場面で最優先される課題は、Aちゃん自身が抱える手術への恐怖の緩和です。母親への説明だけで終わってしまうと、子どもにとって何が行われるのか分からない不安が残り、術前の心理的準備が整いません。子ども本人を中心に据えた支援が求められます。

  3. ×3.  「お母さんから、手術が必要であることを説明してください」

    手術についての説明は、本来、医療者が発達段階や理解力に応じた言葉や教材を用いて行う責任があります。説明の主体を母親だけに委ねると、医学的に正確な情報伝達が難しく、保護者にも心理的負担を強いることになります。母親自身が前回の手術を覚えていないと話していることからも、まず医療者による説明が必要です。

  4. 4.  「手術に対してポジティブに取り組めるよう、Aちゃんに説明しますね」

    学童期の子どもは、未知の体験に対して強い不安を抱きやすい一方で、適切な説明があれば理解し、自分なりに対処しようとする力を持っています。看護師がAちゃん本人に対し、絵本・写真・人形・実物(マスクや点滴セット)などを用いたプレパレーションを行うことで、何がいつ起こるかという見通しが持て、恐怖が軽減し、主体的に手術へ向かえます。これが本場面で最も適切な対応です。

プレパレーションは、子どもが医療を主体的に受けられるよう、年齢や発達段階に応じて情報を提供し、感情表出と対処を支える心理的準備技法です。乳児期は親との分離不安に配慮、幼児期は遊びや人形を用いた具体的説明、学童期は写真や絵カードを使い「いつ・どこで・何をするか」を順序立てて伝え、思春期はプライバシーや自尊心に配慮した本人主体の説明が基本となります。実施手順には、(1)情報提供(プレパレーション)、(2)術中・処置中のディストラクション(気をそらす遊びや声かけ)、(3)終了後のポストプレパレーション(頑張りを称え、体験を再整理する)の3段階があり、トラウマ化を防ぎます。本事例では、前回が緊急手術でプレパレーションが十分に行えなかったため、今回こそ丁寧な術前準備が必要です。

学童期の手術前ケアでは、子ども本人を主役にしたプレパレーションが不安軽減と治療への主体的参加の鍵になります。保護者だけに説明を委ねたり、本人の恐怖を「大丈夫」と封じ込めたりせず、医療者が発達段階に合わせて見通しを伝え、感情表出を受け止める姿勢が問われます。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。