StudyNurse

精神科治療とリハビリ

精神看護学 / 精神科治療・薬物療法

解説

今回は精神科治療とリハビリテーションについて解説します。精神科医療は、症状を抑える治療と、生活機能を取り戻すリハビリテーションの両輪で成り立っており、国試では各治療法・各リハビリ技法の目的と特徴を区別できるかが問われます。

精神科治療の3本柱

精神科の治療は大きく分けて、薬物療法・身体療法・精神療法の3つに分類されます。薬物療法では抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定薬、抗不安薬などを用いて症状の改善を図ります。身体療法の代表が後述する修正型電気けいれん療法です。精神療法は、対話や行動への介入を通じて思考や行動の変化を促す治療法で、認知行動療法や精神分析療法、森田療法、自律訓練法などが含まれます。

認知行動療法

認知行動療法(CBT:Cognitive Behavioral Therapy)とは、ベック(A. Beck)が提唱した精神療法で、出来事に対する認知(物事の捉え方・自動思考)が感情や行動に影響を与えるという理論に基づきます。「全か無か思考」「過度の一般化」「破局視」などの認知の歪みを修正することで、感情や行動を適応的なものへと変えていきます。代表的な技法には、認知再構成法・行動活性化・曝露反応妨害法があり、うつ病・不安障害・パニック障害・強迫性障害・PTSDなどに有効性が示されています。日本でも保険診療の対象となっています。他の精神療法と混同しやすいので、精神分析療法は無意識の洞察、森田療法はあるがままの受容、自律訓練法は自己催眠によるリラクゼーションといった目的の違いを押さえておきます。

修正型電気けいれん療法

修正型電気けいれん療法(m-ECT:modified ElectroConvulsive Therapy)とは、静脈麻酔薬による全身麻酔筋弛緩薬を併用したうえで頭部に短時間の通電を行い、脳内に人工的な発作活動を誘発して精神症状を改善する身体療法です。筋弛緩薬の使用により全身けいれんが起こらないため、従来のECTで問題となった骨折・脱臼・咬舌といった身体合併症が大幅に軽減されました。適応は、薬物治療抵抗性の重症うつ病、自殺念慮の強いうつ病、緊張病(緊張型昏迷)、治療抵抗性統合失調症などで、迅速な効果が必要な場合に選択されます。通常は週2〜3回、計6〜12回を1クールとして実施します。副作用としては一過性の健忘、頭痛、悪心、循環動態の変動などがあり、施行後は麻酔覚醒までの気道管理と見当識障害への対応が看護のポイントとなります。

精神科リハビリテーション

精神科リハビリテーションとは、症状が一定程度安定した患者を対象に、低下した社会生活機能を回復し、地域社会での生活や就労・就学への復帰を支援する取り組みです。

生活技能訓練(SST)

生活技能訓練(SST:Social Skills Training)とは、リバーマン(R. P. Liberman)らが体系化した、認知行動療法を理論的基盤とする精神科リハビリテーション技法です。対人場面で必要な技能を、課題の設定→モデリング(お手本提示)→ロールプレイ(実演)→正のフィードバック→改善点の提示と再実行→宿題(般化)という段階を踏んで学習します。服薬自己管理、症状自己管理、基本会話、余暇の過ごし方などのモジュールがあり、統合失調症を中心に幅広い精神疾患で用いられます。日本では1994年に診療報酬上で入院生活技能訓練療法として保険収載され、退院支援プログラムの中核を担っています。

集団精神療法とヤーロムの治療的因子

集団精神療法とは、複数の患者が治療者とともにグループを構成し、メンバー相互のやりとりを通じて治療的変化を目指す精神療法です。アメリカの精神科医ヤーロム(I. D. Yalom)は、集団精神療法に共通して働く治療的因子を整理しました。代表的な因子としては、自分の悩みや症状が自分だけのものではないと気づく普遍性、知識や助言を得る情報の付与、回復への見通しを得る希望の涵養、生・死・孤独・責任といった人生の根源的課題に向き合う実存的因子などが挙げられます。とくに普遍性は、同じ苦しみを抱える仲間との出会いによって「自分だけではない」という安心と孤立感の軽減をもたらす因子であり、情報の付与(知識の獲得)、希望の涵養(回復への期待)、実存的因子(人生の意味への気づき)とは区別して理解することが国試対策として重要です。

精神科デイケア

精神科デイケアとは、精神疾患により社会生活機能が低下した人を対象に、日中に医療機関へ通所して集団活動・作業療法・SST・心理教育などのプログラムを行うリハビリテーションです。目的は社会生活機能の回復と社会復帰であり、グループ活動を通じた対人関係能力の向上と再発・再入院の予防が中心的な目標となります。通所時間によって、ショートケア(3時間)、デイケア(6時間)、ナイトケア(夕方から4時間)、デイ・ナイトケア(10時間)に区分されます。医師・看護師・精神保健福祉士・作業療法士・臨床心理士などの多職種チームで運営されます。

その他のリハビリ

作業療法(OT)は手工芸や軽作業などの作業活動を介して心身機能の改善を図る療法、心理教育は疾患や治療について本人・家族の理解を深めて対処能力を高める介入、ACT(包括型地域生活支援プログラム)は多職種チームが訪問を中心に地域生活を支えるアウトリーチ型の支援です。

まとめ

精神科治療は薬物療法・身体療法・精神療法の3本柱で進められ、認知行動療法は認知の歪みの修正、修正型電気けいれん療法は全身麻酔と筋弛緩薬を用いた通電治療がそれぞれの要点です。精神科リハビリテーションでは、認知行動療法に基づくSSTで対人技能を学習し、ヤーロムが整理した治療的因子(普遍性・情報の付与・希望の涵養・実存的因子など)を踏まえた集団精神療法やデイケアで社会生活機能の回復と再発予防を図ります。各技法の理論的基盤・目的・対象を整理しておくことが国試対策の鍵となります。

確認問題(穴埋め)

空欄をタップすると答えが表示されます。

  1. 1.

    出来事に対する認知(物事の捉え方)の歪みを修正することで感情や行動の改善を図る精神療法をという。

  2. 2.

    認知行動療法を提唱したのはである。

  3. 3.

    静脈麻酔薬による全身麻酔とを併用したうえで頭部に通電し、脳内に発作活動を誘発する身体療法を修正型電気けいれん療法という。

  4. 4.

    修正型電気けいれん療法の主な適応は、薬物治療抵抗性の重症うつ病、自殺念慮の強いうつ病、、治療抵抗性統合失調症などである。

  5. 5.

    リバーマンらが体系化し、認知行動療法を理論的基盤として対人技能の習得を目指す精神科リハビリテーション技法をという。

  6. 6.

    SSTは、課題の設定→モデリング→→正のフィードバック→改善点の提示と再実行→宿題、という段階を踏んで進められる。

  7. 7.

    ヤーロムが提唱した集団精神療法の治療的因子のうち、自分の悩みや症状が自分だけのものではないと気づくことをという。

  8. 8.

    ヤーロムの治療的因子のうち、回復への見通しを得て治療への意欲が高まることをといい、生・死・孤独・責任といった人生の根源的課題に向き合う因子を実存的因子という。

  9. 9.

    精神疾患により社会生活機能が低下した人を対象に、日中通所して集団活動や作業療法、SSTなどを行い、社会復帰を目指すリハビリテーションをという。

  10. 10.

    精神科デイケアの中心的な目的は、グループ活動を通じた(社会生活機能の回復)と再発予防である。

  11. 11.

    精神科デイケアのうち、通所時間が3時間のものを、10時間のものをデイ・ナイトケアという。

精神科治療とリハビリ」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。