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高齢者の転倒予防

老年看護学 / 運動器・転倒・リハビリ

解説

今回は高齢者の転倒予防について解説します。転倒は高齢者にとって生命予後を左右する重大な事象であり、骨折から廃用症候群、寝たきりへと進行する負の連鎖を引き起こします。看護師は内的要因と外的要因の両面から多角的にアセスメントし、個別性に応じた予防策を講じる必要があります。

転倒の要因

高齢者の転倒要因は内的要因外的要因に大別されます。内的要因には加齢に伴う筋力低下、バランス能力の低下、視力・聴力の低下、認知機能の低下、起立性低血圧、多剤併用などがあります。特に降圧薬・睡眠薬・抗不安薬・抗コリン薬は転倒リスクを高める代表的薬剤です。外的要因には段差、敷物のめくれ、滑りやすい床、暗い照明、不適切な履物などが挙げられます。加齢による水晶体混濁や瞳孔縮小(老人性縮瞳)により暗所視力と暗順応が低下し、対比感度の低下から段差や障害物の認識が遅れる点も重要です。

転倒予防の三本柱

転倒予防の基本は環境整備・運動・服薬の見直しの三本柱です。環境整備では足元照明やセンサーライトの設置、手すりの設置、段差の解消、床に物を置かないこと、寝室からトイレまでの動線を直線化することが有効です。履物は踵があり滑りにくいシューズを選択します。運動はレジスタンス運動、バランス訓練、柔軟性運動を組み合わせ、薬剤については多剤併用を見直します。さらに視力・聴力の評価、たんぱく質とビタミンDを意識した栄養管理も加えた多面的アプローチが推奨されます。

つまずき予防と下肢の運動

歩行時のつまずきは前脛骨筋の筋力低下が主因です。前脛骨筋は足関節背屈に働き、遊脚期につま先を持ち上げて床から離す役割を担います。筋力が低下するとつま先が引きずられ、わずかな段差で転倒します。座位でつま先を持ち上げるトゥレイズが有効です。下肢全体のバランス筋力訓練として大腿四頭筋を鍛えるスクワット、下腿三頭筋を鍛えるヒールレイズ、大殿筋を鍛えるヒップリフトを組み合わせます。足関節の底背屈運動は座位や臥位でも実施でき、腓腹筋・ヒラメ筋と前脛骨筋を刺激して血行を促進し、静脈還流を改善することで立ちくらみの軽減にもつながります。

起立性低血圧と移動介助

長時間の臥床後の急な起立は起立性低血圧を引き起こし転倒の原因となります。加齢による循環調節機能の低下に降圧薬や睡眠薬の影響が加わり発症しやすくなります。移動の前には立ちくらみの有無を確認し、端座位で足底接地・背筋伸展・前傾姿勢を整えてから立ち上がるよう介助します。立ち上がり時のふらつきがある場合はベッドに移動介助バーを設置し、手の支えとバランス保持を確保します。過度な行動制限は廃用を助長するため、リスク要因を個別に排除しながら自立を支援する姿勢が大切です。

認知症高齢者の転倒

認知症高齢者では転倒が生活上の重大なリスクとなります。認知症高齢者の日常生活自立度判定基準ではI(自立)、II(多少の支障があるがほぼ自立、IIaが家庭外、IIbが家庭内)、III(症状や行動・意思疎通の困難が頻繁)、IV(常時介護を要する)、M(精神症状で専門医療を要する)に分類されます。頻尿で急いで移動したり失禁による尿で滑ったりして転倒しやすく、大腿骨近位部骨折から廃用症候群、寝たきりへと連鎖します。夜間照明、ポータブルトイレや尿パッドの活用、手すりの設置で予防します。

高齢者に多い骨折と骨粗鬆症対策

高齢者の四大骨折は上腕骨近位部骨折・橈骨遠位端骨折・大腿骨近位部骨折・脊椎椎体骨折であり、いずれも骨粗鬆症を背景に転倒で生じます。上腕骨近位部骨折で転位が少なく安定していれば、三角巾とバストバンドで上腕を体幹に固定し肩関節の外転・外旋を抑えて保存療法を行います。固定は三〜四週で、早期から手指・手関節の自動運動を行い、肩関節はCodman体操(振り子運動)で拘縮を予防します。大腿骨頸部骨折では転位の少ない若年例で骨接合術、高齢者や転位型では人工骨頭置換術が選択され、深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症、脱臼、せん妄、褥瘡の予防のため早期離床が基本方針です。円背のある患者では背中にクッションを当てて脊柱の弯曲を支え、踵の除圧を含めたポジショニングを行います。骨粗鬆症の進行抑制には栄養・運動・日光浴の三本柱が重要で、日光浴により皮膚で紫外線からビタミンDが合成され、腸管からのカルシウム吸収が促進されます。カルシウムは乳製品・小魚・大豆・緑黄色野菜、ビタミンDは魚やきのこ、ビタミンKは納豆や緑葉野菜から摂取します。

まとめ

高齢者の転倒予防は、内的要因と外的要因の双方を評価し、環境整備・運動・服薬見直しの三本柱を中心に多面的に介入することが基本です。前脛骨筋強化や足関節背屈運動によるつまずき予防、起立性低血圧への配慮、認知症の自立度に応じた環境調整、骨粗鬆症対策としての栄養・運動・日光浴を組み合わせることで、転倒から骨折、廃用症候群への連鎖を断ち切ることができます。患者と協働して原因を分析し、自立を尊重した支援を行うことが看護の要となります。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    高齢者の転倒予防の三本柱は環境整備・運動・である。

  2. 2.

    歩行時のつまずきは足関節背屈に働き遊脚期につま先を持ち上げるの筋力低下が主因となる。

  3. 3.

    長時間臥床後の急な起立で血圧が低下し転倒の原因となる病態をという。

  4. 4.

    高齢者の四大骨折は上腕骨近位部骨折・・大腿骨近位部骨折・脊椎椎体骨折である。

  5. 5.

    上腕骨近位部骨折で保存療法を行う際、肩関節の拘縮予防として早期から行う振り子運動をという。

  6. 6.

    認知症高齢者の日常生活自立度判定基準で、家庭外で多少の支障があるが日常生活はほぼ自立しているのはである。

  7. 7.

    骨粗鬆症進行抑制の三本柱は栄養・運動・であり、皮膚で紫外線からビタミンDが合成されカルシウム吸収を促進する。

  8. 8.

    転倒リスクを高める代表的薬剤として降圧薬・・抗不安薬・抗コリン薬が挙げられる。

  9. 9.

    加齢で瞳孔が縮小し暗所視力が低下する現象をという。

  10. 10.

    大腿骨頸部骨折で高齢者や転位型に選択される術式はである。

高齢者の転倒予防」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。