介護保険の被保険者と給付
健康支援と社会保障制度 / 医療保険・社会保障制度
解説
今回は介護保険の被保険者と給付について解説します。介護保険制度は、高齢化の進行に伴い増大する介護ニーズを社会全体で支える仕組みとして、2000年(平成12年)4月に施行された社会保険制度です。看護師国家試験では、保険者・被保険者の区分、認定の流れ、給付の種類が繰り返し問われる必修テーマですので、制度の骨格をしっかり押さえていきましょう。
介護保険制度の保険者
保険者とは、保険制度を運営し、保険料を徴収し、給付を行う主体のことを指します。介護保険の保険者は市町村および特別区(東京23区)です。これは介護保険法第3条に定められており、住民にもっとも身近な行政単位が運営することで、地域の実情に応じたサービス提供を可能にしています。小規模な自治体では、複数の市町村が共同で運営する広域連合や一部事務組合を設置する場合もあります。 保険者の主な役割は、被保険者の資格管理、保険料の徴収、要介護認定、保険給付、地域支援事業の実施などです。財源は公費が50パーセント(国25パーセント・都道府県12.5パーセント・市町村12.5パーセント)、保険料が50パーセントという構成になっています。
被保険者の区分
介護保険の被保険者は、年齢によって第1号被保険者と第2号被保険者の2つに区分されます。この区分の違いは国家試験で頻出ですので、年齢・保険料・給付要件をセットで覚えましょう。
第1号被保険者
第1号被保険者は65歳以上の者です。第1号被保険者は、要介護・要支援状態となった原因を問わず介護サービスを利用できる点が大きな特徴です。65歳に到達した時点で市町村から介護保険被保険者証が交付されます。 保険料は、本人および世帯の所得や住民税課税状況に応じて、市町村ごとに所得段階別の定額制で設定されます。徴収方法は2種類あり、年金が一定額(年額18万円)以上の人は年金から天引きされる特別徴収、それ以外の人は市町村が直接徴収する普通徴収となります。
第2号被保険者
第2号被保険者は40歳以上65歳未満の医療保険加入者です。第2号被保険者は、加齢に伴う16の特定疾病により要介護・要支援状態となった場合に限り介護サービスを利用できます。第1号と異なり、原因疾患に制限がある点に注意してください。被保険者証は要介護認定を受けた者にのみ交付されます。 保険料は医療保険料に上乗せして医療保険者が徴収し、納付金として介護保険制度に拠出される仕組みです。
特定疾病
第2号被保険者の給付要件となる特定疾病は、加齢との関連が深い16疾病が法定されています。具体的には、末期がん、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、後縦靱帯骨化症、骨折を伴う骨粗鬆症、初老期における認知症、パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症・パーキンソン病)、脊髄小脳変性症、脊柱管狭窄症、早老症、多系統萎縮症、糖尿病性神経障害・腎症・網膜症、脳血管疾患、閉塞性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患、両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症です。脳血管疾患・末期がん・初老期認知症などが代表的な出題ターゲットです。
要介護認定の流れ
介護サービスを利用するためには、要介護認定を受ける必要があります。申請先は居住地の市町村(特別区を含む)の介護保険担当窓口です。本人または家族が原則ですが、地域包括支援センターや居宅介護支援事業者に申請を代行してもらうことも可能です。 申請後は、認定調査員による訪問調査と主治医意見書をもとに、コンピュータによる一次判定が行われます。続いて、その結果と特記事項をもとに、市町村が設置する介護認定審査会で二次判定が実施されます。介護認定審査会は保健・医療・福祉の学識経験者で構成される附属機関です。原則として申請から30日以内に認定結果が通知されます。 認定結果に不服がある場合は、都道府県に設置された介護保険審査会に審査請求を行います。「認定は市町村、不服は都道府県」とセットで覚えると混同を防げます。
要介護度の区分
認定結果は、要支援1・要支援2の2区分と、要介護1〜要介護5の5区分を合わせた計7段階に判定されます。要支援は「日常生活の一部に見守りや支援が必要だが、改善の可能性が見込まれる状態」で予防給付の対象、要介護は「継続的に介護が必要な状態」で介護給付の対象となります。
介護保険の保険給付
介護保険における保険給付は、要介護認定の区分に応じて大きく2つに分類されます。
介護給付
介護給付は要介護1〜5と認定された方に対する給付で、訪問介護、訪問看護、通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション、短期入所生活介護(ショートステイ)、福祉用具貸与、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)への入所などの施設サービスが含まれます。
予防給付
予防給付は要支援1・2と認定された方に対する給付で、要介護状態への進行を予防することを目的としています。介護予防訪問看護、介護予防通所リハビリテーション、介護予防福祉用具貸与などのサービスがあります。
市町村特別給付と地域支援事業
保険給付とは別に、市町村が条例で独自に上乗せ・横出しするサービスを市町村特別給付と呼びます。また、要支援・要介護状態となることを予防し、地域で自立した生活を継続できるよう支援することを目的とした地域支援事業も市町村が実施します。地域支援事業は「介護予防・日常生活支援総合事業」「包括的支援事業」「任意事業」の3本柱で構成され、配食サービス・見守り・買い物支援などの生活支援サービスや、地域包括支援センターによる総合相談・権利擁護・ケアマネジメント支援が含まれます。
利用者負担
サービス利用時の自己負担は原則1割で、所得に応じて2割または3割となります。要介護度ごとに区分支給限度基準額が定められており、これを超えるサービス利用分は全額自己負担となります。
まとめ
介護保険制度の保険者は市町村および特別区であり、被保険者は65歳以上の第1号被保険者と、40歳以上65歳未満の医療保険加入者である第2号被保険者に区分されます。第1号は原因を問わず、第2号は16の特定疾病に該当する場合のみ給付対象となる点が重要です。要介護認定は市町村に申請し、介護認定審査会の二次判定を経て要支援1・2と要介護1〜5の計7段階に区分されます。給付は要介護者向けの介護給付と要支援者向けの予防給付に大別され、保険給付とは別建てで市町村特別給付や地域支援事業も実施されます。年齢区分・申請先・判定機関・給付の種類を一連の流れとして整理し、国家試験に備えましょう。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
介護保険制度の保険者はであり、介護保険法第3条に定められている。
- 2.
介護保険の第1号被保険者は歳以上の者であり、要介護・要支援状態となった原因を問わず介護サービスを利用できる。
- 3.
介護保険の第2号被保険者は40歳以上65歳未満のであり、加齢に伴う16の特定疾病により要介護状態となった場合に限り介護サービスを利用できる。
- 4.
要介護認定の申請先は、被保険者が居住する(特別区を含む)の介護保険担当窓口である。
- 5.
要介護認定の二次判定(審査・判定業務)を行う機関はであり、市町村が設置する附属機関である。
- 6.
要介護認定の結果に不服がある場合は、都道府県に設置されたに審査請求を行う。
- 7.
介護保険の要介護認定では、要支援1・2と要介護1〜5を合わせた計段階の区分に判定される。
- 8.
介護保険の保険給付のうち、要支援1・2と認定された者に対するサービスをといい、要介護状態への進行予防を目的とする。
- 9.
介護保険の保険給付のうち、要介護1〜5と認定された者に対するサービスをという。
- 10.
第1号被保険者の保険料徴収方法のうち、年金が一定額以上の人について年金から天引きで徴収する方法をという。
「介護保険の被保険者と給付」の過去問演習
介護保険の自己負担は最大何割?1割・2割・3割の仕組みを徹底解説
第115回 午後 第3問
介護保険は誰が支える?「共助」のしくみと市町村・都道府県の役割を整理
第115回 午前 第57問
40歳から使える介護保険?16の特定疾病を覚えるコツ
第114回 午後 第86問
地域支援事業の全体像を把握しよう
第113回 午前 第4問
介護保険の7区分—要支援2+要介護5の構造を押さえる
第112回 午前 第5問
要支援状態への予防給付を理解しよう
第111回 午後 第4問
要介護認定はどこに申請する?
第110回 午前 第4問
介護保険の被保険者区分、40歳の壁をマスター
第109回 午前 第3問
介護保険の保険者は? 〜社会保障制度の基礎〜
第108回 午前 第4問
介護保険の第1号被保険者を理解しよう
第108回 午後 第29問
介護保険の『65歳』と『40歳』-2つの被保険者区分を整理しよう
第106回 午前 第4問
介護保険制度の給付を整理しよう
第105回 午前 第4問
要介護認定はだれが判定するのか
第104回 午後 第4問
要介護認定はどこに申請する?介護保険の窓口を確認
第103回 午後 第3問
介護保険第1号被保険者の制度を整理する
第103回 午前 第35問
