清潔ケア(清拭・洗髪・入浴)
基礎看護学 / 清潔・療養環境
解説
清潔ケアとは、患者の身体を清潔に保ち、皮膚や粘膜の機能を維持するために行う基本的な看護援助のことです。今回は清拭・洗髪・足浴・陰部洗浄・入浴といった清潔ケアについて解説します。
清潔ケアの目的
清潔ケアの目的は単に汚れを落とすことだけではありません。皮膚の清潔保持に加えて、温熱刺激や摩擦による血行促進、爽快感によるリラックス効果、ケア中の皮膚観察による異常の早期発見、そして患者とのコミュニケーションの機会となります。臥床患者にとっては数少ない感覚刺激の場でもあり、心身両面に働きかける重要な援助です。
全身清拭
全身清拭は、入浴ができない患者に対してタオルで全身を拭く方法です。
湯温と環境
準備する湯の温度は**50〜55℃とやや高めにします。これはタオルを絞る過程で気化熱が奪われ温度が下がるためで、皮膚に触れる時点でのタオル温度が40〜42℃**になるよう調整します。室温は22〜26℃に保ち、すきま風を防ぎ、プライバシーを確保します。高齢者・知覚低下患者・意識障害患者では、熱傷予防のため介助者が必ず自分の前腕内側などで温度を確認してから皮膚に当てます。
拭き方の原則
拭く方向は末梢から中枢に向かいます。これは静脈還流を促進するためです。陰部・殿部は交差感染防止のため最後に拭きます。石鹸を使用した場合は十分にすすぎ、皮膚に残らないようにします。
洗髪
洗髪は頭皮と頭髪の清潔を保ち、爽快感を得るためのケアです。湯温は40〜41℃を目安とし、準備時はやや高めの42〜43℃にして実施時に適温に調整します。洗う際は指の腹を使い、爪を立てません。指の腹を使うことで頭皮の血行促進効果も得られます。
ベッド上で行う場合はケリーパッドと防水シーツを使用し、頭部をやや高くして肩甲骨下にバスタオルを入れます。室温は24〜26℃、所要時間は15〜20分以内とします。耳には湯が入らないよう手で覆うか専用の耳栓を用います。脱脂綿は水を含んで重くなり耳道に残るおそれがあるため不適切です。終了後は冷感による体温低下を防ぐため、頭髪を完全に乾かします。
足浴
足浴は両足をくるぶしの少し上まで湯に浸す部分浴です。湯温は38〜40℃(40±2℃)、時間は10〜15分が目安です。末梢血管が拡張して全身循環が促進され、副交感神経が優位となって筋緊張がほぐれ、リラックス効果や入眠促進、疼痛緩和、末梢冷感や浮腫の軽減、認知症患者のBPSD改善などが期待できます。就寝の1〜2時間前に行うと、深部体温の変動を利用して入眠を促せます。
心疾患・循環器疾患のある患者では40℃以上の湯は循環器系の負担となるため避けます。糖尿病性神経障害のある患者では知覚が低下しているため、介助者が必ず湯温を確認し、熱傷に注意します。全身浴が困難な臥床患者や終末期患者にも実施できる安全性の高いケアです。
陰部洗浄
陰部洗浄の湯温は38〜39℃の微温湯とします。粘膜は熱に弱いためです。拭く方向は前から後ろが原則で、女性では尿道口→膣口→肛門の順、男性では尿道口→亀頭→陰嚢→陰嚢の裏側→鼠径部→肛門の順に拭きます。同じ部位を2度拭きせず、その都度清潔な面を使って交差感染を防ぎます。
入浴の3大物理作用
入浴には三つの物理作用があります。温熱作用は末梢血管を拡張させ、筋を弛緩させ、副交感神経を優位にして疲労回復・疼痛緩和・入眠促進をもたらします。ただし42℃以上では交感神経が優位となり血圧が上昇するため、リラックス目的では40℃以下が適します。
静水圧作用は全身循環を促進し下肢の静脈還流を増やしますが、心不全患者では心負荷が増すため注意が必要です。胸郭への圧で呼吸が浅くなる場合は半身浴が推奨されます。浮力作用により水中では体重が約9分の1に感じられ、関節への負荷が軽減されるためリハビリテーションにも有用です。
ヒートショックと予防
ヒートショックとは、脱衣所→浴室→浴槽→脱衣所と移動するたびに生じる急激な血圧変動により、高齢者で心筋梗塞・脳卒中・溺水の誘因となる現象です。冬季の高齢者で年間1万人を超える死亡が推計されています。予防には脱衣所と浴室を事前に暖めること、湯温は41℃以下、入浴時間は10分以内、かけ湯で体を慣らすこと、食直後・飲酒後・睡眠薬服用直後を避けること、入浴前後の水分補給、独居高齢者では家族への声かけが重要です。なお、入浴中に血圧が低下しやすいのは浴槽から出た時で、静水圧の解除と立位による起立性低血圧が重なるためです。
高齢者の入眠援助
高齢者の不眠に対しては非薬物的介入を優先します。足浴、室温調整、日中の活動促進、夕方以降のカフェイン回避などが有効です。ベンゾジアゼピン系睡眠薬はBeers基準で使用注意とされ、転倒・認知機能低下・せん妄のリスクがあります。また高齢者は皮膚が菲薄で温度感覚が鈍麻しているため、清潔ケア全般でやや低めの40℃前後から始めるのが安全です。
まとめ
清潔ケアは清潔保持に加え、血行促進・観察・コミュニケーションの機会となる総合的な看護援助です。清拭は湯温50〜55℃で準備し皮膚には40〜42℃で末梢から中枢へ、洗髪は40〜41℃で指の腹を使用、足浴は38〜40℃で10〜15分、陰部洗浄は38〜39℃で前から後ろが基本です。入浴には温熱・静水圧・浮力の3作用があり、高齢者ではヒートショック予防として湯温41℃以下・入浴10分以内が重要となります。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
全身清拭で準備する湯の温度は℃とし、皮膚に触れるタオルの温度は℃に調整する。
- 2.
清拭で拭く方向は静脈還流を促進するためからに向かい、陰部・殿部は交差感染防止のために拭く。
- 3.
洗髪時の湯温は℃を目安とし、洗う際は爪を立てずを用いて頭皮の血行を促進する。
- 4.
ベッド上洗髪ではと防水シーツを使用し、耳には湯が入らないよう手で覆うか専用を用いる。脱脂綿は水を含むため不適切である。
- 5.
足浴の湯温は℃で、くるぶしの少し上まで分行うとリラックス効果や入眠促進が得られる。
- 6.
陰部洗浄の湯温は粘膜への刺激を考慮し℃の微温湯とし、女性は尿道口→膣口→の順に前から後ろへ拭く。
- 7.
入浴の3大物理作用は作用・作用・作用である。
- 8.
高齢者のヒートショック予防では、湯温は℃以下、入浴時間は分以内とし、脱衣所と浴室を事前に暖めておく。
- 9.
入浴中に血圧が低下しやすいのは時で、静水圧の解除と立位による起立性低血圧が要因となる。
- 10.
高齢者の不眠に対する非薬物的介入としてが有効であり、ベンゾジアゼピン系睡眠薬は転倒・などのリスクからBeers基準で使用注意とされる。
「清潔ケア(清拭・洗髪・入浴)」の過去問演習
清拭の極意!皮膚に触れる40〜42℃の科学
第112回 午前 第19問
入浴援助の鉄則『ヒートショック』を防ぐ環境整備
第112回 午後 第20問
洗髪介助のポイント
第110回 午後 第20問
足浴の湯温は40±2℃!安全で心地よいケアを提供しよう
第110回 午前 第20問
陰部洗浄の適温はここ!粘膜を守る温度管理
第109回 午前 第17問
入浴は最強のリラクセーション——温熱・水圧・浮力の三重奏
第109回 午後 第20問
入浴と血液循環の関係を理解しよう
第108回 午後 第36問
湯船から立ち上がる瞬間が危ない!入浴と血圧の関係
第107回 午前 第38問
足浴は眠りの味方!副交感神経を味方につけるメカニズム
第106回 午前 第19問
洗髪介助の基本
第105回 午後 第18問
清拭の湯温は準備と実施で違う
第105回 午後 第19問
高齢者の不眠には足浴から
第105回 午後 第37問
