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体位と良肢位

基礎看護学 / 体位・移動・活動

解説

今回は体位と良肢位について解説します。 体位とは、身体の姿勢のことであり、看護では患者の状態や治療目的に応じて適切な体位を選択・保持することが求められます。良肢位とは、関節拘縮や麻痺が生じても日常生活動作(ADL)に最も支障が少ない関節角度のことを指します。本記事では基本体位から応用体位、良肢位の角度、目的別体位、長期臥床への対策までを順に整理します。

基本体位

基本体位には仰臥位、側臥位、腹臥位、座位の4つがあります。仰臥位は背中を下にして寝た姿勢で、全身を臥床面に預けるためエネルギー消費が最も少なく、床上洗髪などに適しています。側臥位は横向きの体位で、下側の上肢や胸郭が圧迫されやすいため、上側の上肢の下となる胸腹部、背部、両下肢の間にクッションを挿入して圧分散と安楽を図ります。腹臥位はうつ伏せの体位で、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対する腹臥位療法では酸素化の改善が得られます。座位は上半身を起こした姿勢です。

応用体位

臨床ではベッドの角度や下肢の屈曲を組み合わせた応用体位が多く用いられます。

ファウラー位とセミファウラー位

ファウラー位は上半身を45〜60度挙上した体位で、床上排便では腹圧をかけやすく適しています。セミファウラー位は上半身を30度挙上した体位で、経管栄養後の逆流予防などにも用いられます。ファウラー位では頭側を挙上することで身体が足側へずり落ちやすくなるため、膝窩に枕を挿入して膝を軽度屈曲位にし、上半身のずれやずり落ちを防ぎます。あわせて足底をフットボードやクッションで支持すると、より安定した姿勢を保つことができます。

起坐位

起坐位は上半身を起こしてオーバーテーブルなどに前傾する姿勢で、呼吸困難時の安楽体位として重要です。横隔膜が下降して肺が広がりやすくなり、また静脈還流が減少して肺うっ血が軽減するため、左心不全や気管支喘息発作時に好まれます。

シムス位

シムス位はJ.M. Simsが考案した半腹臥位で、左側臥位を基本に右膝を強く屈曲して前方に出し、上半身をやや伏せます。直腸診や浣腸、妊婦の安楽体位として用いられるほか、意識のない患者の気道確保(回復体位)にも応用されます。

その他の体位

トレンデレンブルグ位は頭を低く下肢を高くした頭低位で、ショック時などに用いられます。砕石位(截石位)は両股関節を屈曲・外転させた体位で、分娩や婦人科診察、肛門手術時に用いられます。

良肢位

良肢位は機能肢位とも呼ばれ、各関節が拘縮しても日常生活が最も支障なく行える角度です。肩関節は外転10〜30度、屈曲・外旋位、肘関節は屈曲90度で食事や整容、書字に最適です。前腕は回内回外中間位、手関節は背屈10〜20度とします。股関節は屈曲10〜30度、外転10〜15度、内外旋中間位、膝関節は屈曲10度に保ちます。足関節は背屈・底屈0度の中間位とし、これは尖足予防の基本姿勢でもあります。

安楽体位の原則

安楽体位の原則は、良肢位を保ち、接触面積を広くして圧を分散し、関節の過伸展や過屈曲を避け、呼吸を妨げないことです。仰臥位では膝下に小枕を入れて10〜15度の軽度屈曲とすると腰部の負担が軽減します。側臥位では前述の通り胸腹部・背部・下肢間にクッションを配置します。

目的別の体位

胃洗浄では左側臥位にして頭部を15〜20度低くします。胃は左に膨らんでいるため、左側臥位では幽門が相対的に高くなり、洗浄液の十二指腸への流入と、嘔吐時の気道への流入を防ぐことができます。呼吸困難では起坐位、床上排便ではファウラー位、エネルギー消費を最小にしたい床上洗髪では仰臥位を選択します。胃食道逆流の予防では、食後30分から1時間は座位またはファウラー位を保ち、就寝時は頭側を10〜15cm挙上します。経管栄養後も30〜60分はファウラー位(頭側30〜45度挙上)を保持します。

長期臥床の合併症と予防

長期臥床では褥瘡、廃用症候群(筋萎縮・関節拘縮・骨粗鬆症・起立性低血圧)、深部静脈血栓症、誤嚥性肺炎、便秘、せん妄などが生じやすくなります。褥瘡予防の基本は2時間ごとの体位変換であり、仙骨部への圧を分散する30度側臥位(30度ルール)や体圧分散マットレスを併用します。仰臥位では足底にクッションを挿入して**足関節を90度(背屈中間位)**に保ち、尖足を予防します。

体位変換と循環

立位になると下肢に約500〜800mLの血液が貯留して静脈還流が減り、心拍出量と脳血流が低下します。健常者では圧受容器反射により交感神経が興奮し心拍数が増えて代償しますが、高齢者や長期臥床後の患者では調節機構が鈍く、起立性低血圧を起こしやすくなります。離床の際は仰臥位からヘッドアップ、端座位、立位と段階的離床を行うことが重要です。

片麻痺のポジショニング

片麻痺患者では良肢位を保ちつつ、麻痺側上肢を適切に支持して肩関節亜脱臼を予防します。弛緩期と痙性期で筋緊張が異なるため、それぞれに応じた肢位の工夫が必要です。

まとめ

体位は治療効果と安楽、合併症予防に直結する基本ケアです。基本体位と応用体位の特徴、各関節の良肢位の角度、目的別の体位選択(胃洗浄=左側臥位+頭低位、呼吸困難=起坐位、洗髪=仰臥位)、2時間ごとの体位変換と足関節90度による尖足予防、段階的離床による起立性低血圧予防までを体系的に押さえておくことが、国試対策の要となります。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    上半身を45〜60度挙上した体位をといい、床上排便にも適している。

  2. 2.

    上半身を起こしオーバーテーブルに前傾する姿勢で、呼吸困難時の安楽体位として用いられるのはである。

  3. 3.

    左側臥位を基本に右膝を強く屈曲した半腹臥位で、浣腸や直腸診、意識のない患者の回復体位として用いられるのはである。

  4. 4.

    胃洗浄を行う際はとし、頭部を15〜20度低くすることで洗浄液の十二指腸流入と嘔吐時の気道流入を防ぐ。

  5. 5.

    良肢位において肘関節は屈曲度に保つことで、食事や整容、書字に最も支障が少なくなる。

  6. 6.

    良肢位において股関節は外転度、内外旋中間位に保つ。

  7. 7.

    仰臥位の足底にクッションを挿入し足関節を90度に保つことは、の予防につながる。

  8. 8.

    褥瘡予防の基本として、原則時間ごとに体位変換を行う。

  9. 9.

    全身を臥床面に預けるためエネルギー消費が最も少なく、床上洗髪に適した体位はである。

  10. 10.

    長期臥床後の患者では起立性低血圧を起こしやすいため、仰臥位からヘッドアップ、端座位、立位へと進めるが重要である。

  11. 11.

    ファウラー位では頭側挙上に伴い身体が足側へずり落ちやすいため、に枕を挿入して膝を軽度屈曲位とし、上半身のずれやずり落ちを防ぐ。

体位と良肢位」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。