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訪問看護の制度と運営

地域・在宅看護論 / 訪問看護・在宅看取り

解説

今回は訪問看護の制度と運営について解説します。訪問看護とは、疾病や障害を抱えながら自宅などで療養生活を送る人に対して、看護師等が居宅を訪問し、主治医の指示と連携のもとで療養上の世話や診療の補助を行うサービスのことです。看護師国家試験では、訪問看護の根拠法(医療保険と介護保険の使い分け)、訪問看護ステーションの指定要件・人員基準、訪問看護指示書の種類、利用回数の制限など、制度面が頻出します。基礎から順に整理していきましょう。

訪問看護制度のなりたち

訪問看護は、1991年(平成3年)の老人保健法改正により老人訪問看護制度として創設されました。当初は高齢者を対象とした制度でしたが、1994年(平成6年)の健康保険法改正で対象が全年齢に拡大され、在宅で療養するすべての人が利用できるサービスとなりました。さらに2000年(平成12年)の介護保険法施行に伴い、要介護認定を受けた人については介護保険からの給付が優先される現在の枠組みが整いました。「平成3年に高齢者向けで創設、平成6年に全年齢へ拡大、平成12年から介護保険優先」という流れを押さえておくと整理しやすいです。

訪問看護ステーションとは

訪問看護を提供する事業所のうち、看護師等が管理者となって独立して運営する事業所を訪問看護ステーションと呼びます。訪問看護ステーションを開設するには、都道府県知事(指定都市・中核市では市長)の指定を受ける必要があり、申請主体は法人格を持つことが要件となります。法人形態は医療法人、社会福祉法人、株式会社などの営利法人、特定非営利活動法人(NPO法人)、協同組合、地方公共団体など幅広く認められており、多様な担い手によって在宅医療を支える仕組みになっています。

人員基準

指定訪問看護ステーションには、保健師・看護師・准看護師を常勤換算で2.5人以上配置することが定められています。常勤換算とは、職員全員の週勤務時間の合計を常勤職員の週勤務時間で割った値で、たとえば常勤週40時間として週20時間勤務の非常勤2人がいれば常勤換算1.0人となります。

管理者は適切な訪問看護を提供するために必要な知識と技能を有する常勤の保健師または看護師でなければなりません。医師や准看護師、介護福祉士、理学療法士などは管理者になることができない点に注意が必要です。看護職員のほかに理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を配置することも可能で、リハビリテーション機能を兼ね備えた事業所も多くなっています。

設備・運営基準

訪問看護ステーションには事務室・相談室・手洗い設備など、業務に必要な広さの専用区画を備えることが求められます。運営面では運営規程の整備、サービス提供前の重要事項説明、秘密保持、苦情対応、事故発生時の対応などが義務付けられています。訪問看護記録は原則として2年間の保存義務があり、利用者本人から開示請求があった場合には記録を開示する義務があります。これは個人情報保護や診療情報提供の指針に基づく利用者の権利保障の仕組みです。

訪問看護指示書

訪問看護は、必ず主治医が交付する訪問看護指示書に基づいて提供されます。看護師の判断のみで医療処置を独自に行うことはできません。指示書には療養上の留意事項、必要な医療処置の内容、有効期間などが記載されます。

通常の訪問看護指示書の有効期間は最長6か月です。一方、急性増悪・終末期・退院直後など頻回の訪問看護が必要と主治医が判断した場合に交付される特別訪問看護指示書は、有効期間が14日間に限定されます。特別訪問看護指示書の交付は原則として月1回までですが、気管カニューレを使用している利用者と真皮を越える褥瘡のある利用者では月2回まで交付可能です。

特別訪問看護指示書が交付されている期間中は、通常であれば介護保険が優先される利用者であっても医療保険に切り替わり、週4回以上の訪問、1日複数回の訪問、複数の訪問看護ステーションからの同時利用といった通常の制限を超えたケアが可能になります。

医療保険と介護保険の使い分け

訪問看護は医療保険と介護保険のいずれかから給付されますが、利用者の状況によってどちらが優先されるかが決まります。基本ルールは「介護保険が医療保険よりも優先」で、要支援・要介護認定を受けている人(原則65歳以上、または特定疾病に該当する40〜64歳)は介護保険から訪問看護を利用します。

ただし、以下の場合は例外として医療保険からの給付となります。第一に、厚生労働大臣が定める疾病等に該当する場合です。これには末期の悪性腫瘍、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、脊髄小脳変性症、ハンチントン病、進行性筋ジストロフィー、パーキンソン病関連疾患(一定の重症度以上)、多系統萎縮症、プリオン病、後天性免疫不全症候群、頸髄損傷、人工呼吸器使用状態などが含まれます。これらは要介護認定の有無にかかわらず医療保険優先となります。第二に、急性増悪時など特別訪問看護指示書が交付された期間中です。第三に、精神科訪問看護の対象者(認知症を主病名とする場合を除く)です。精神科訪問看護は精神科を標榜する医師が交付する『精神科訪問看護指示書』に基づき、年齢を問わず医療保険から給付されます。

訪問回数の制限

医療保険による訪問看護は原則として週3回までですが、厚生労働大臣が定める疾病等の該当者や特別訪問看護指示書の期間中はこの制限が解除され、週4回以上の訪問や複数ステーションからの同時利用が可能になります。一方、介護保険による訪問看護は区分支給限度基準額の範囲内でケアプランに沿って提供されます。令和元年(2019年)の介護サービス施設・事業所調査では、訪問看護の利用者数は介護保険による利用者の方が医療保険による利用者よりも多いことが示されており、高齢化を背景に介護保険利用が拡大していることがわかります。

まとめ

訪問看護は平成3年の老人訪問看護制度に始まり、平成6年に全年齢に拡大、平成12年から介護保険優先の枠組みで運営されています。訪問看護ステーションの開設には都道府県知事の指定が必要で、法人格があれば医療法人やNPO法人など幅広い主体が事業者になれます。人員基準は看護職員が常勤換算2.5人以上、管理者は常勤の保健師または看護師です。訪問看護は主治医の訪問看護指示書(最長6か月)に基づき提供され、急性増悪時には特別訪問看護指示書(14日間)が交付されて医療保険に切り替わります。原則は介護保険優先ですが、厚生労働大臣が定める疾病等、特別指示期間中、精神科訪問看護では医療保険が優先される点が国試最頻出のポイントです。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    訪問看護ステーションを開設するためには、(指定都市・中核市では市長)の指定を受ける必要がある。

  2. 2.

    指定訪問看護ステーションには、保健師・看護師・准看護師を常勤換算で人以上配置することが定められている。

  3. 3.

    訪問看護ステーションの管理者は、常勤のでなければならない。

  4. 4.

    訪問看護は、主治医が交付するに基づいて提供される。通常の訪問看護指示書の有効期間は最長か月である。

  5. 5.

    急性増悪・終末期などで頻回な訪問が必要なときに交付されるの有効期間は日間で、この期間中は医療保険からの給付となる。

  6. 6.

    訪問看護の保険適用は原則としてが医療保険より優先されるが、末期の悪性腫瘍やALSなど厚生労働大臣が定める疾病等の該当者はからの給付となる。

  7. 7.

    医療保険による訪問看護の訪問回数は原則として週回までであるが、厚生労働大臣が定める疾病等や特別訪問看護指示書の期間中は回数制限が緩和される。

  8. 8.

    訪問看護事業所の開設主体は法人格を持つことが要件であり、医療法人や社会福祉法人だけでなくも開設できる。

訪問看護の制度と運営」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。